北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

空気の指標

2010年07月29日
上士幌
ある程度標高の高い山を歩いていると、樹の枝から垂れ下がった不思議な浮遊物のようなものが目に付きます。
これはサルオガセという地衣類の仲間。これが生きているということは、空気がきれいな証拠。


藻類と菌類の共生体という地衣類ですが、サルオガセは樹木から栄養を横取りする寄生で生きているわけではなく、一切の水分を大気中の霧などから得て生存しています。このため木を枯らしてしまうキノコのような菌類とは性質を異にするんですね。
菌類は藻類に安定した生育環境を提供し、藻類は光合成で得た栄養を菌類に与えるという共生関係により、地上から離れた場所でも生育できることになったわけです。
日本では古くから修験者の薬や食料として用いられてきました。効能の程は証明されていませんが、あく抜きして食べると海草のような味がするそうです。
山深い幽谷でまさに霞を食って生きている仙人のような生き物です。
幻想的というか怪しいというか、少し怖い雰囲気の見た目ですが、空気がきれいなお墨付きのようなもの。思い切り深呼吸してみてはいかがでしょうか。この季節なのでヤブ蚊やブヨを吸い込んでも責任は持てませんが。

トムラウシ自然休養林にて