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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで50日前】

2010年08月26日
羅臼
知床に育つコマクサから(ケマンソウ科コマクサ属)

 高山植物の女王と呼ばれるコマクサ。
 「女王」と呼ばれるだけあって、どこでも見られるわけではなく、本州と北海道の限られた高山帯の砂礫(されき)地でしか見ることが出来ません。それ故か、登山者からは「憧れの花」、「高山植物の象徴」と見られることが多いようです。

 知床半島にもコマクサは分布していますが、有名なシレトコスミレの名前に隠れてしまうのか、あまり認知されていないように感じます。


コマクサはシレトコスミレと同じ砂礫地に生育する。(知円別岳付近 7月上旬)


 少し話が移りますが、コマクサなどの高山植物が、本州や北海道、時には国を超えて見られることに対して疑問を感じたことはありませんか?

 「綿毛が飛んで移動した」、「動物が実を食べて運んだ」と言う方もいるかもしれませんが、これでは遠く彼方の山までは種が届かないのではないでしょうか。
 正解はもっと壮大です。
 植物たちは、氷河期時代に海面が下がったことにより、島や大陸を伝って分布を広げたのです。氷河期が終わって暖かくなると、当時の環境に適応していた植物たちは麓では生きていけなくなり、高山帯へ逃げ延びたのでした。このような地球規模の気候変動によって、高山植物は各地の高山地帯に分断され、現在まで互いに交わることも無くひっそりと、しかし確実にいのちを繋いできたのです。

 分断されて長い年月が経った現在では、同じコマクサでも他の地域のコマクサとは遺伝子レベルではタイプが異なる(他の植物も同様)と言われています。同種の植物一つをとっても、それぞれの場所で少しずつ変化を続けているのです。
 そう考えると、「あの花はもう見たからいいや」と飽きることもありませんし、細かいところまで観察してみたりするものです。実際に花の色や茎の長さ、葉っぱの形等々、本州産の植物と比べると結構違いがあり、知床のコマクサは小さい株が多いなぁ・・という印象を受けます。自然の多様さには本当に驚かされます。


白花のコマクサ

本州や大雪山でコマクサを見た人は知床の山にも登ってみませんか?
氷河期時代に離ればなれになった別なコマクサ達との出会いが待っていますよ!?