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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

冬のウスユキソウ群生地

2011年02月22日
稚内
 冬のウスユキソウ群生地に行ってきました。現在、群生地に通じる礼文林道は雪に覆われており、たどり着くにはスノーシュー(西洋かんじき)やスキーが必要です。今回は香深側入り口からスノーシューをはいて登って行きました。礼文林道は雪のない時期は道幅2~3mほどの歩きやすいコースですが、冬のこの時期は積雪のため場所によってコースが斜面に吸収されて壁のようになっているところもあるなど、通行には注意が必要です。また、群生地までの所要時間も夏の倍の90分(夏は40~50分)ほどかかります。ただ、ササや低木の背丈近くまで雪が積もっている場所は雪原の様相で見通しがよく、冬ならではの美しさがあります。キラキラと太陽を反射する雪原と頭上の青空を飛ぶオジロワシ。何とも素晴らしい光景でした。




写真① ササの背丈まで雪が積もり、雪原になっている場所(2/20撮影)

 西に向かって登っていくにつれて、次第に風が強くなり、群生地手前の見晴らし台付近では、吹き飛ばされそうなほどの強風が吹いていました。群生地付近は島の西側に面しており、西からの風がまともにあたる場所なのですが、その風のせいで西側斜面には雪がほとんど積もっていませんでした。
以前、礼文島の風と積雪の関係が高山植物の発達に影響しているという記事を書きましたが、今回、そのわかりやすい例を紹介したいと思います。
 まず、写真②をご覧ください。これは群生地を北側から南の方角に向かって撮影したものです。




写真② ウスユキソウ群生地の写真。赤い矢印の斜面がウスユキソウはじめ、高山植物の群落になる場所。向かって右側の西から強い風が吹きます(2/20撮影)

 この写真に写っている小屋の向こう側の斜面が夏にレブンウスユキソウをはじめ、高山植物が数多く咲く場所です。ここで気づくのは小屋の周辺には積雪があるのに対し、その奥の斜面にはほとんど雪が積もっていないということです。写真①のように風が弱いところはササの背丈近くまで積雪があるのに対し、強風が吹き付ける西側斜面は雪が飛ばされてしまうためです。どれだけ風が強いかは写真③を見ると良くわかります。




写真③ 向かって左側、西から吹く風で矢印の向きに雪が動いて模様ができているのがわかりますか?(2/20撮影)
 
 これは写真②の撮影ポイントから逆を向いて北の方角を撮影したものです。この写真を見て、雪に模様がついているのがお分かりでしょうか?この模様は強風によってついたもので、始終強い風が吹いていることを表しています。強い風が吹いて雪が飛ばされてしまう場所では雪による保温効果がなく、冷たい風が吹き付け、土壌の温度が低くなります。そのため、この場所は通常低地に生息する植物には非常に厳しい環境になり、だからこそ高山植物の楽園になるのです。
 レブンウスユキソウをはじめ、礼文島の高山植物たちはこうして厳しい冬を乗り越えて、春から秋にかけて色とりどりの花を咲かせるのです。

以前の記事はこちらから
http://hokkaido.env.go.jp/blog/author/author443.html