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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

エゾタヌキとアライグマ

2011年04月21日
支笏湖
 東日本大震災から1ヶ月が経ちました。被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。皆様の安全と一日も早い復興を願い、自分のできる範囲で協力していきます。

 先日、地域の方から「アライグマがいる」との連絡を受け、現地確認をしてきました。そこにいたのはアライグマではなく、小柄で痩せているエゾタヌキでした。エゾタヌキは逃げる気配もなくじっとしていましたが確かに呼吸をしています。狸寝入りでしょうか。タヌキは擬死といって本当に死んだふりをします。全く動かなかったので少し不安になりましたが、翌日朝にはいなくなっていたのできっと大丈夫でしょう。

タヌキとアライグマの違い、皆さんはわかりますか?なかなか見ることのできない野生動物を区別することはなれていない人には難しいかもしれません。英語圏に分布していないタヌキの英語の名前はラクーンドッグ(Raccoon dog)といいます。dogはご存じ犬のことですが、raccoonとはアライグマのことです。特定外来生物に指定されているアライグマは北アメリカ、英語圏の地域原産のいきものです。一方タヌキは日本、中国、ロシアなどアジア原産のいきものです。欧米の人たちもタヌキとアライグマは似ていると感じたようですね。
そんな2種類の動物を最も簡単な見分け方は、尻尾の模様の違いです。エゾタヌキの尻尾は茶色や黒といった体と同じ色をしています。一方アライグマは茶色と黒の縞模様になっています。顔の特徴は、タヌキはヒゲが黒く目立たない耳が丸いのが特徴です。アライグマのヒゲは白くて目立ち、耳には白い縁取りがありタヌキよりも角張っている印象です。
また、アライグマはその特徴から足跡で見分けることもできます。アライグマの足跡は人間の赤ちゃんの手形のような形をしています。ある場所でアライグマの足跡だらけのぬかるみを見つけたことがあるのですが、ぬかるみに残るいくつもの赤ちゃんの手形はホラー映画のワンシーンのようでとにかく気持ち悪かったことを覚えています。いつか日本でこの足跡が見つからない日がくると良いのですが、残念ながらその道のりはまだまだ長いでしょう。

普段見ることのないいきものを違ういきものと勘違いすることはよくあります。ですが、いつの間にかタヌキがいなくなりアライグマだらけになってしまうのは絶対に避けなければなりません。アライグマによって地域の大切ないきものが絶滅してしまう可能性もあります。また、外来生物だけでなく盗掘など、人の手によって貴重ないきものがいなくなるということも絶対にあってはなりません。国立公園の中でアライグマなど特定外来生物を見つけた場合や貴重な植物が盗掘されていたという情報がありましたらぜひ保護官事務所までお越し下さい。皆様から情報を頂くことで守れる自然があるはずです。



上の写真がエゾタヌキ、下がアライグマです。尻尾は見えませんが、顔の特徴の違いがわかるかと思います。





アライグマの足跡。人の手形にそっくりです。

※特定外来生物
 日本の生態系や農業被害、身体に多大な被害をもたらす恐れのあるいきもの。生きたままの移動や飼育、譲渡などが規制されている。アライグマの他にアメリカミンク、ウチダザリガニ、セアカゴケグモなどが指定されている。