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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

標高のお話③ ~三角点~

2011年06月07日
阿寒湖
前々回、前回と、雌阿寒岳、雄阿寒岳の標高について記載しました。

【雌阿寒岳:1499m】
【雄阿寒岳1370.4m】
さらに雌阿寒岳の南側には、
【阿寒富士:1475.8m】

皆さんは、この標高の記載に何か違和感を覚えませんか?
そう、「なぜ雌阿寒岳が0.1m単位の記載ではないのか?」
実は、標高の測量方法の違いによるものなのです。

地形図等を作製する為に行う三角測量において、三角形の頂点位置に基準となる「三角点」というものが設置される事は、皆さんご存知かと思います。
この三角点には等級があり、現在では一辺が約40kmの三角形の頂点が一等、より細かくなるごとに二等、三等、四等と設置されています。

この三角点、阿寒富士山頂に一等、雄阿寒岳山頂に二等が設置されています。


【阿寒富士の一等三角点】
一辺が18cmの柱石です。
向こうに見える火口が雌阿寒岳。


【雄阿寒岳の二等三角点】
一辺が15cmの柱石。

このように三角点のある場所は、「現地測量による標高点」となり標高は0.1m単位で記載されます。
三角点の地図記号は分かりやすく「△の中に・」で、横に「1370.4m」等記載されています。

これに対し、雌阿寒岳の標高は「写真測量による標高点」と呼ばれるものです。
写真測量という空中写真を用いて求められた標高で、1m単位で記載されます。
地図記号は「・1499m」等と記載されます。

では、なぜ雌阿寒岳ではなく標高の低い阿寒富士に三角点を設けたのでしょうか?


【雌阿寒岳から見た阿寒富士】

5月13日掲載の【コバルトブルー】の画像でも分かる通り、阿寒富士は山頂が盛り上がった、独立峰のようなきれいな円錐の山容をしています。
雌阿寒岳は、上の一等三角点の画像のように山頂が大きな火口になっており、その周囲の一端が山頂となっています。阿寒富士にくらべ、(噴煙の影響もあり)山頂が分かりづらい山容です。

三角点は山の高さを測るのでなく、測量の為「周囲から見通しが良く作業しやすい所」が選ばれますので、どこからでも見通しの良い阿寒富士山頂が選ばれたのではないでしょうか(推測ですが)。

日本一高い富士山山頂の三角点が、一等ではなく二等三角点となっている理由も、「周辺の一等三角点から見えにくい」という事が、一因としてあるそうです。

このように、三角点は「見通しの良い=展望が良い」ということで、一等三角点ピークの山を選んで登山されている方がいます。
皆さんも参考にされてはいかがでしょうか?
ただし、一等三角点だけでも北海道に224箇所、全国で972箇所あるそうです。
(もちろん、全て山頂にある訳ではないですが・・・。)