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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

しれとこ科学教室 第2回

2011年08月19日
ウトロ
フレペの滝遊歩道にて、しれとこ「科学教室」の第2回が開催されました。

世界自然遺産である知床では、専門家による「科学委員会」が設置されています。
知床の自然を保護・管理し、未来へと引き継いでいくためには、多くの解決しなければならない課題があります。それぞれの分野の専門家が調査研究をしながら、科学的な立場から課題に対して助言をしています。それが、「知床世界自然遺産地域科学委員会」なのです。

・・・そう聞いても、実際は何をしているのか分からないよ、という人がほとんどです。

そこで、地元住民を対象として、この知床の地でどんな調査が行われているのか、何が分かってきているのかを科学委員会のメンバーが解説して、地元と科学委員会をもっと近づけよう、そんな思いで企画されたのが、しれとこ「科学教室」です。

今回はフレペの滝遊歩道を散策しながら、エゾシカによる植生への影響について解説をしていただきました。
科学委員会のメンバーである、石川 幸男 氏が講師です(弘前大学白神自然環境研究所 教授)。

最初は、座学から始まりました。




知床の植生のこと、エゾシカの越冬地などがスライドで紹介されました。また、エゾシカの食害により、植生が変化してしまった知床岬地区の現状の説明を受けました。昔と今の写真では、岬の草原の様子が様変わりしています。

座学を受けた後は、実際にフレペの滝遊歩道を歩きながらの解説です。

知床岬と同じようなことが、フレペの草原でも起きているようです。
だた、昔のフレペの草原の様子を知る資料が少ないので、どのように変化をしているのかを判断することは難しいといいます。

「昔はこんなにワラビもハンゴンソウもなかったはず・・」

しかし、それは「記憶」でしかなく、科学的な判断のためには「記録」(写真など)として残すことが大切、そう石川先生はおっしゃっていました。

フレペの草原で、どのように植生調査やっているのか、実際に見せていただきました。

まず、約2m四方の位置(プロット)を定め(可能ならば、今後も全く同じ箇所を調べられるように杭を打ち込みます)、
そのプロットの中に、どの植物がどれぐらいの割合を占めているか(「被度」といいます)を目分量で調べます。

「ワラビは5(75~100%)だな」
「う~ん、この植物は2か3かな」
「こっちは4」

こんな具合に調べていき、被度とあわせて高さも調べます。

今後、この「被度」と「高さ」がどのように変化していくのかを見ていくのです。




私は、そういった調査を目にするのが初めてでしたので、「へぇ、そんな風にやるんだ」と素直な驚きでした。調査というと難しいことをしている印象ですが、やっていること自体は非常にシンプルでした。
ただ、そのシンプルなことをするための知識や労力、時間が必要であり、その結果を分析するには、それだけの知識・労力・時間がまた必要です。

知床岬では柵を作り、エゾシカの影響を受けない場所を設けたことによる、植物の回復状況の調査を続けています。石川先生によると、植生の回復が見られているとのことです。
また、この3年間でエゾシカの駆除を行い、岬地区での頭数を半数近くにまで減らした結果(半数にまで減らしても、植生の回復にはほど遠いのではないか、と当初予想していましたが)、植生の回復の兆しが少し見えているそうです。

フレペの草原を石川先生とよく調べてみると、エゾシカの食害を受けながらも、小さく生き延びている植物を見ることもできました。
直に見たり触れたりすることは、単に話を聞いたり写真を見たりするよりも印象に残ります。
20年後、30年後でも、「直に」その植物を見ることができればいいな、と思います。


 ( 参加者との記念撮影 )

科学委員会の会議は、基本的に誰でも会議を聞くことができるようオープンなものになっています。
また、会議資料なども知床データセンター( http://dc.shiretoko-whc.com/index.html )から入手可能です。
知床でどんなことが行われているのか、興味がある方はぜひご覧ください。

皆様の興味・関心が、知床の自然を未来へと引き継いでいくことに繋がります。