アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
「1頭Get!」は「100頭Get!!」
2011年10月12日
羅臼
ある日のこと。
「家の庭先にセイヨウオオマルハナバチの巣があるみたいなんだけど…。」
とある羅臼町民の方から、ご連絡をいただきました。
「セイヨウオオマルハナバチつかまえたよ!」と、
何度も羅臼ビジターセンターに、つかまえたセイヨウオオマルハナバチを
持ってきてくれた小学生のご親戚のお宅でした。
特定外来生物に指定されているセイヨウオオマルハナバチ。
羅臼町では2007年に初めて確認されました。
以来、駆除作業を行ったり、より多くの方に知ってもらうため
小学校で授業をしたり、講習会を開いたりと、活動を重ねてきました。
その成果か、セイヨウオオマルハナバチという外来種のハチがいる、という
認知が少しずつ浸透している、と感じる機会が増えてきました。
そんな折にいただいたご連絡。
このお宅では、ほとんど毎日庭先で観察と捕獲を続けてくれ、
どうやら出入りしている場所が近くにあるようだ、とまで
つきとめてくださいました。
飛来する姿は確認できても、巣の場所の特定はなかなかできません。
また、巣ごと駆除できる機会もそうあるものではありません。
そこで、連絡をくださったお宅のご協力のもと、巣の駆除作業を
行うことになりました。
マルハナバチの巣は、地中のノネズミの古巣や建物の床下などに作られます。
今回の巣は地中にあり、おそらくネズミの古巣を利用したもののようでした。
さほど攻撃性が高くないマルハナバチ類、とはいえ、針はありますし、
巣を攻撃されれば襲う可能性もあります。
殺虫スプレーを片手に、スコップで掘り進めることおよそ2時間。
2時間…。掘りました。
次々とワーカーやオスバチが出てくる中、
掘り進める土に枯れ草が混じり、やがてそれは柔らかい感触に変わりました。
巣に近づいた証拠です。
その時、新女王が姿を現しました。
新女王は、秋にオスバチと交尾しこの冬を越し、
来春新しいコロニーを作ります。
女王1頭から新女王が100頭以上生まれるセイヨウオオマルハナバチ。
この駆除作業中、計7頭の新女王が捕獲されました。
ということは…
来年生まれるかもしれなかった女王バチ700頭を捕獲したことになります!
さらに少しずつ掘り進めると…
小さなお団子を積み重ねたような、ぶどうの粒の塊のような、
いくつもの卵室と蜜壺がでてきました。
これがセイヨウオオマルハナバチの巣です。
今回駆除した巣や捕獲したハチは、今後の普及啓発用に教材となり、
また羅臼ビジターセンターでも展示される予定です。
今回の駆除作業には、近くの小学校の4年生が理科の時間を使って
見学に来ていました。
駆除作業を一緒に行ってくださった先生から、
セイヨウオオマルハナバチを駆除する理由などの説明を受けながら、
巣の近くで飛び回るハチを捕まえてくれました。
ワーカーからオスバチ、新女王、女王、そして巣まで観察した子ども達。
きっとセイヨウオオマルハナバチのことを、覚えてくれたことでしょう。
さいごに…
春、たった一頭でこの巣を作り、コロニーを大きく成長させた女王。
この秋でその命を終えようとしているその体は、
すでにボロボロの状態でした。
彼女は、最後の最後まで巣にしがみついていました。
命をかけ、最後まで子どもや巣を守りきろうとするその姿は、
まさに母親そのものでした。
セイヨウオオマルハナバチは
在来種との軋轢や、交雑による在来種の繁殖の妨害、
花とハチの送粉関係の妨害、外来寄生生物の拡大など…
在来生態系への影響を懸念され、問題となっています。
しかし、本当に悪いのはセイヨウオオマルハナバチでしょうか。
外来生物はだれが、なぜ生み出してしまったのでしょうか。
セイヨウオオマルハナバチの母の背に、
人間の都合を感じずにいられませんでした。
(写真提供:教育委員会,知床財団)
「家の庭先にセイヨウオオマルハナバチの巣があるみたいなんだけど…。」
とある羅臼町民の方から、ご連絡をいただきました。
「セイヨウオオマルハナバチつかまえたよ!」と、
何度も羅臼ビジターセンターに、つかまえたセイヨウオオマルハナバチを
持ってきてくれた小学生のご親戚のお宅でした。
特定外来生物に指定されているセイヨウオオマルハナバチ。
羅臼町では2007年に初めて確認されました。
以来、駆除作業を行ったり、より多くの方に知ってもらうため
小学校で授業をしたり、講習会を開いたりと、活動を重ねてきました。
その成果か、セイヨウオオマルハナバチという外来種のハチがいる、という
認知が少しずつ浸透している、と感じる機会が増えてきました。
そんな折にいただいたご連絡。
このお宅では、ほとんど毎日庭先で観察と捕獲を続けてくれ、
どうやら出入りしている場所が近くにあるようだ、とまで
つきとめてくださいました。
飛来する姿は確認できても、巣の場所の特定はなかなかできません。
また、巣ごと駆除できる機会もそうあるものではありません。
そこで、連絡をくださったお宅のご協力のもと、巣の駆除作業を
行うことになりました。
マルハナバチの巣は、地中のノネズミの古巣や建物の床下などに作られます。
今回の巣は地中にあり、おそらくネズミの古巣を利用したもののようでした。
さほど攻撃性が高くないマルハナバチ類、とはいえ、針はありますし、
巣を攻撃されれば襲う可能性もあります。
殺虫スプレーを片手に、スコップで掘り進めることおよそ2時間。
2時間…。掘りました。
次々とワーカーやオスバチが出てくる中、
掘り進める土に枯れ草が混じり、やがてそれは柔らかい感触に変わりました。
巣に近づいた証拠です。
その時、新女王が姿を現しました。
新女王は、秋にオスバチと交尾しこの冬を越し、
来春新しいコロニーを作ります。
女王1頭から新女王が100頭以上生まれるセイヨウオオマルハナバチ。
この駆除作業中、計7頭の新女王が捕獲されました。
ということは…
来年生まれるかもしれなかった女王バチ700頭を捕獲したことになります!
さらに少しずつ掘り進めると…
小さなお団子を積み重ねたような、ぶどうの粒の塊のような、
いくつもの卵室と蜜壺がでてきました。
これがセイヨウオオマルハナバチの巣です。
今回駆除した巣や捕獲したハチは、今後の普及啓発用に教材となり、
また羅臼ビジターセンターでも展示される予定です。
今回の駆除作業には、近くの小学校の4年生が理科の時間を使って
見学に来ていました。
駆除作業を一緒に行ってくださった先生から、
セイヨウオオマルハナバチを駆除する理由などの説明を受けながら、
巣の近くで飛び回るハチを捕まえてくれました。
ワーカーからオスバチ、新女王、女王、そして巣まで観察した子ども達。
きっとセイヨウオオマルハナバチのことを、覚えてくれたことでしょう。
さいごに…
春、たった一頭でこの巣を作り、コロニーを大きく成長させた女王。
この秋でその命を終えようとしているその体は、
すでにボロボロの状態でした。
彼女は、最後の最後まで巣にしがみついていました。
命をかけ、最後まで子どもや巣を守りきろうとするその姿は、
まさに母親そのものでした。
セイヨウオオマルハナバチは
在来種との軋轢や、交雑による在来種の繁殖の妨害、
花とハチの送粉関係の妨害、外来寄生生物の拡大など…
在来生態系への影響を懸念され、問題となっています。
しかし、本当に悪いのはセイヨウオオマルハナバチでしょうか。
外来生物はだれが、なぜ生み出してしまったのでしょうか。
セイヨウオオマルハナバチの母の背に、
人間の都合を感じずにいられませんでした。
(写真提供:教育委員会,知床財団)