アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
迷子のアザラシさん
2012年05月10日
苫小牧
どうもお久しぶりです。
GWの桜もあっという間に飛んで行き、もうすぐそこに夏がやって来ていますね。
さて、実はこの時期はある生き物の出産期なのです。
ある生き物とは・・・そう! ゼニガタアザラシです!
胆振地方の沿岸部では、ゼニガタアザラシの大群が今まさに出産ピークを迎えているのですが、明るい話題の裏には悲しい現実もあるもので・・・
なんと5月7日~9日にかけて毎日1頭、計3頭の子アザラシが保護されてしまいました。(9日の子は残念ながら搬送途中で死んでしまいました。)
この子達は皆、周辺に親がおらず漁港の陸地でぐったりと衰弱しているところを発見され通報されました。
…….5月7日…午前9時……電話が鳴り保護の一報が入る………..
さぁ、ここでアクティブレンジャーの出番です!!
鳥類や陸生ほ乳類には多少の経験がありましたが、海獣はまったくの初めて!!
さすがに緊張します。
事務所の本棚にあった、ゼニガタアザラシの本をつかみ取り車に乗り込んで気がつきました、運転してたら本が読めない・・・。
いろいろな状況を想像し対処法を考えながら現地に到着。
受け取った赤ちゃんは、ぐったりと寝そべっていて辛そうに呼吸をしていました。
「スー、フー、スー、フー」と荒い呼吸が続き「フーッ」と大きく息を吐きます。
体がぶるぶると震え、私には寒そうに見え自分のジャンパーをかけてみました。
水に濡らしたティッシュを口元に近づけて水を飲ませようとしますが口を開けてくれません。
とにかく急いで水族館へ搬送しなければ! 赤ちゃんに負担をかけないように慎重に運転しながら、たまに様子をうかがいます。やはり辛そうに息をして震えている。
ハンドルを握る手が汗ばみます。
ようやく小樽市 小樽水族館へ到着し、獣医さんに強心剤や抗生物質の注射を受け、飼育員の方がミルクに浸した魚を与えます。しかし、魚を口の中に押し込んで飲ませようとしますが飲み込んでくれません。体力を回復させるためにはなんとか食べて欲しいのですが・・・。それでもお母さんのミルクには何も敵わないそうです。
どうしても食べてくれないので、次の日からゴムチューブを胃の中まで挿入してミルクを直接流し込み与える事になりました。
オス・体重14.46kg・体温36.8度
「どうか宜しくお願いします。」 獣医さんに今後の治療をお願いし帰路に付きました。
しかし、嫌な出来事は続くもので・・・
…….5月8日…午前9時……またしても電話が鳴り保護の一報が………..
昨日の隣町、同じ状況でへその緒の付いたゼニガタアザラシの赤ちゃんが保護されました。
やはりぐったりしていますが、車に移動すると「コォー、コォー」とお母さんを呼んでいるかのように何度か鳴きました。
よかった、声を出す元気はあるようだ。
体温を素手で確認すると明らかに体が熱く発熱していることがわかりました。
アザラシの平熱は36.8度程度と人間の赤ちゃんくらい、私たち人間の大人としては少し高めな温度です。
(※36度を下回ると低体温で危険だそうです。)
水を与えますが、やはり飲もうとはせず、「フー、フー」と荒く早く呼吸をしています。
搬送途中、今まで静かに寝ていた赤ちゃんがいきなり騒ぎ始め、「コォー、コォー」と鳴きながらごそごそと動き出しました。
一体どうしたのかとバックミラーで覗いたその時!!
車の中に何とも言えない甘い香りが立ちこめてきました。
そう、う○こをしたようです。
鳴いて知らせるなんて、やっぱり人間と一緒だなぁと感動していましたが、さすがに密室では厳しい。
高速のパーキングに止めて様子をみると、まさにお尻がう○こまみれ、さらにオシッコもしたようで体がぐっしょり濡れてしまっていました。
体が濡れたままだと体温が下がるので、オシッコなどを拭き取り乾かしてあげるとすっきりしたのかあくびをしてゴロンと寝返りを打っていました。
しかし呼吸は依然として荒く、あくびは酸欠の症状かもしれないので窓を開け空気を入れ換えて再度水族館に向けて走り出しました。
やっと水族館に到着し、昨日のように注射や採血を受けます。
獣医さんが言うには、昨日の子よりもさらに危険な状態だそうで、体全体がむくんでおり、左の顔が全体的に腫れていて化膿していることが気になるとの事でした。
オス・体重12.72kg・体温39.5度(発熱しています) 前足には犬のような爪が。 体温を確かめようとした私の指をギュっと握りました。
帰りに昨日の子の様子を見てきましたが、顔を起こせるようになり少し回復してきているとの事でした。しかし、いつ様態が急変してもおかしくないとのことで予断は許さないとの事でした。
環境の仕事をしていると、種単位や群れ単位で生き物を見なければなりません。そうしなければ自然環境という大きなフィールドでのシステムを理解出来ないからです。
しかし、種や群れはたった1つの個体(1匹、1羽など)から成り立っているものであり、個体とは学問では計り知れない生命の原点である存在なのです。
目の前の命に向き合いながら、地球規模で自然環境、生物多様性を考えていかなければと再確認した2日間でした。
3匹のゼニガタアザラシから、忘れかけていた大切な事を思い出させてもらった出来事でした。毎日の生活に流されず、信念を持って生きてゆこうと再決心したのでした。
9日に保護された子は、残念ながら搬送中に死亡してしまいました。
GWの桜もあっという間に飛んで行き、もうすぐそこに夏がやって来ていますね。
さて、実はこの時期はある生き物の出産期なのです。
ある生き物とは・・・そう! ゼニガタアザラシです!
胆振地方の沿岸部では、ゼニガタアザラシの大群が今まさに出産ピークを迎えているのですが、明るい話題の裏には悲しい現実もあるもので・・・
なんと5月7日~9日にかけて毎日1頭、計3頭の子アザラシが保護されてしまいました。(9日の子は残念ながら搬送途中で死んでしまいました。)
この子達は皆、周辺に親がおらず漁港の陸地でぐったりと衰弱しているところを発見され通報されました。
…….5月7日…午前9時……電話が鳴り保護の一報が入る………..
さぁ、ここでアクティブレンジャーの出番です!!
鳥類や陸生ほ乳類には多少の経験がありましたが、海獣はまったくの初めて!!
さすがに緊張します。
事務所の本棚にあった、ゼニガタアザラシの本をつかみ取り車に乗り込んで気がつきました、運転してたら本が読めない・・・。
いろいろな状況を想像し対処法を考えながら現地に到着。
受け取った赤ちゃんは、ぐったりと寝そべっていて辛そうに呼吸をしていました。
「スー、フー、スー、フー」と荒い呼吸が続き「フーッ」と大きく息を吐きます。
体がぶるぶると震え、私には寒そうに見え自分のジャンパーをかけてみました。
水に濡らしたティッシュを口元に近づけて水を飲ませようとしますが口を開けてくれません。
とにかく急いで水族館へ搬送しなければ! 赤ちゃんに負担をかけないように慎重に運転しながら、たまに様子をうかがいます。やはり辛そうに息をして震えている。
ハンドルを握る手が汗ばみます。
ようやく小樽市 小樽水族館へ到着し、獣医さんに強心剤や抗生物質の注射を受け、飼育員の方がミルクに浸した魚を与えます。しかし、魚を口の中に押し込んで飲ませようとしますが飲み込んでくれません。体力を回復させるためにはなんとか食べて欲しいのですが・・・。それでもお母さんのミルクには何も敵わないそうです。
どうしても食べてくれないので、次の日からゴムチューブを胃の中まで挿入してミルクを直接流し込み与える事になりました。
オス・体重14.46kg・体温36.8度
「どうか宜しくお願いします。」 獣医さんに今後の治療をお願いし帰路に付きました。
しかし、嫌な出来事は続くもので・・・
…….5月8日…午前9時……またしても電話が鳴り保護の一報が………..
昨日の隣町、同じ状況でへその緒の付いたゼニガタアザラシの赤ちゃんが保護されました。
やはりぐったりしていますが、車に移動すると「コォー、コォー」とお母さんを呼んでいるかのように何度か鳴きました。
よかった、声を出す元気はあるようだ。
体温を素手で確認すると明らかに体が熱く発熱していることがわかりました。
アザラシの平熱は36.8度程度と人間の赤ちゃんくらい、私たち人間の大人としては少し高めな温度です。
(※36度を下回ると低体温で危険だそうです。)
水を与えますが、やはり飲もうとはせず、「フー、フー」と荒く早く呼吸をしています。
搬送途中、今まで静かに寝ていた赤ちゃんがいきなり騒ぎ始め、「コォー、コォー」と鳴きながらごそごそと動き出しました。
一体どうしたのかとバックミラーで覗いたその時!!
車の中に何とも言えない甘い香りが立ちこめてきました。
そう、う○こをしたようです。
鳴いて知らせるなんて、やっぱり人間と一緒だなぁと感動していましたが、さすがに密室では厳しい。
高速のパーキングに止めて様子をみると、まさにお尻がう○こまみれ、さらにオシッコもしたようで体がぐっしょり濡れてしまっていました。
体が濡れたままだと体温が下がるので、オシッコなどを拭き取り乾かしてあげるとすっきりしたのかあくびをしてゴロンと寝返りを打っていました。
しかし呼吸は依然として荒く、あくびは酸欠の症状かもしれないので窓を開け空気を入れ換えて再度水族館に向けて走り出しました。
やっと水族館に到着し、昨日のように注射や採血を受けます。
獣医さんが言うには、昨日の子よりもさらに危険な状態だそうで、体全体がむくんでおり、左の顔が全体的に腫れていて化膿していることが気になるとの事でした。
オス・体重12.72kg・体温39.5度(発熱しています) 前足には犬のような爪が。 体温を確かめようとした私の指をギュっと握りました。
帰りに昨日の子の様子を見てきましたが、顔を起こせるようになり少し回復してきているとの事でした。しかし、いつ様態が急変してもおかしくないとのことで予断は許さないとの事でした。
環境の仕事をしていると、種単位や群れ単位で生き物を見なければなりません。そうしなければ自然環境という大きなフィールドでのシステムを理解出来ないからです。
しかし、種や群れはたった1つの個体(1匹、1羽など)から成り立っているものであり、個体とは学問では計り知れない生命の原点である存在なのです。
目の前の命に向き合いながら、地球規模で自然環境、生物多様性を考えていかなければと再確認した2日間でした。
3匹のゼニガタアザラシから、忘れかけていた大切な事を思い出させてもらった出来事でした。毎日の生活に流されず、信念を持って生きてゆこうと再決心したのでした。
9日に保護された子は、残念ながら搬送中に死亡してしまいました。