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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

外来種子の防除にご協力ください

2012年08月16日
稚内
 現在、礼文島南部の桃岩展望台から元地灯台へと向かう歩道の入り口に木の枠に囲まれたマットが設置されています。これは環境省の外来種防除事業の一環として試験的に行っているもので、歩道の入り口にマットを置くことで外来植物の種子が侵入するのを水際で防ごうというものです。


桃岩展望台入り口に設置されているマット

 辞書などによると、外来種という言葉の定義は「もともとその地にいなかったにもかかわらず、人間の活動によって他の地域から入ってきた生物」ということですが、実は私たちも知らず知らずのうちに外来種の侵入に一役買ってしまっている可能性があるのです。特に植物については靴の底に種子をつけて他の場所に移動することが原因の一つとして考えられています。歩道の入り口にマットを設置しているのはそうやって移動してくる種子が高山植生の中へ侵入するのを防ぐという目的があるのです。ただ、このマットは定期的に交換しているため、時にはまったく汚れておらず、踏むのをためらわれる方もいるようです。しかし、このマットは踏まれなければ意味のないものです。遠慮は要りませんので靴底についた種子をマットでしっかり落としてから歩道を歩くようお願いします。


外来種子防除への協力を呼び掛ける貼り紙

 フラワーロードと呼ばれ春から秋にかけて色とりどりの高山植物で埋め尽くされる桃岩歩道ですが、近年はセイヨウタンポポ、ムラサキツメクサ、シロツメクサなど元々礼文島には生育していなかった外来種が侵入してきています。そこでそれら外来種の生育域がこれ以上広がらないようにするため、侵入状況の調査やすでに侵入している個体の除去作業など、在来の植物を守るための取り組みを行っています。そしてそれは礼文島の生物多様性を保全することにつながります。外来種とはいえ、ひとつの種を排除しようとすることは一見、生物多様性の保全とは逆行するように思えるかもしれません。実際、そこで精いっぱい生きている外来種を引き抜くときは申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、こうした外来種の中には侵略的に周囲の植物を駆逐してしまうものもあり、それによってその場所で長い間生きてきた一つの種が失われることこそ生物多様性の大きな損失なのです。そのような事態にならないために、侵入してしまった外来種を地道に除去していくことはもちろんですが、外来種がこれ以上侵入しないようにするための対策も必要であり、そのために皆様のご協力をお願いしたいのです。礼文島の生物多様性保全のためにまずはマットで種子を落とすというだれにでも気軽にできる小さな行動から始めてみませんか?


マットから回収した土。現在このサンプルの中に外来種の種子があるかどうか分析を行っているところです。ちなみに赤い丸で囲った大きな種子は外来種ではないようです(セリ科のオオハナウド?)

【関連リンク】
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/
(環境省生物多様性ホームページ)

http://www.env.go.jp/nature/intro/index.html
(外来生物法)

http://www.town.rebun.hokkaido.jp/ikimono/index.html
(礼文島いきものつながりプロジェクト)