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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

人工飼育のシマフクロウ森へかえる 第2章

2012年08月30日
苫小牧
第2章の始まりです。

再捕獲されてからはケージの中で、順調に馴化をしていったシマフクロウのオスですが、すっかり体重も元に戻り、羽の生え替わりも済ませました。(一時は抜け掛かった羽がぼさぼさでとっても可愛らしかったです 笑)

そして迎えた2回目の放鳥

試行錯誤はしましたが、数日後にオスが給餌池に来たときには嬉しさ半分、ほっとしたのが本音です。
また、捕まえることになったら可愛そうですもんね。

その後オスとメスは2羽で魚を捕るようになり、その様子が設置しているビデオカメラでも確認できるようになったことで、いよいよ繁殖も期待出来るところまで来ました。

ここから情報収集は、ビデオの映像に託されることになりました。
夕方から次の日の朝まで給餌池を録画し、映像を確認しました。
すると2月を最後にメスが給餌池に来なくなったのです。

このことが意味するのは、メスが卵を温めている可能性が高いと言うことです。
ここからは、一気に事態が動き出します。

オスが、今まで池の縁で食べていた魚を、持ち去るようになったのです。
私たちはこの持ち去りという行動を頼りに、メスの様子を推理していきました。

オスが魚をメスに運んでいる=メスは卵を抱いていて魚を捕りに来られない

そして約2ヶ月半後、メスが再度給餌池に現れました。
この段階ではまだヒナが孵ったのかは分かりません。

するとメスも魚を持ち去り、どこかへ運んでいるではないですか。
つまり巣にはヒナが誕生していて、エサを待ちわびているということになります。

これほどの朗報はありません。
ビデオの映像ごしとはいえ、魚を捕る姿を自然に応援している自分がいました。

そしてついに、ヒナに脚環を付ける日を迎えました。
この日まで本当にヒナが居るかどうかの確認は出来ていませんでした。

そして・・・ いました!

元気なヒナが2羽。 後の遺伝子検査でメスと判明。
無事に脚環を付けることができました。

獣医さんによるヒナの健康診断の様子

これは大変なことです!!
人工飼育下で育ったシマフクロウが野生個体のメスと、繁殖に成功したということは記録が残っている中では初めてのことなのです。

それから今、親子4羽は毎日元気にエサを捕りにきていますよ!!
これから、幼鳥は少しずつ魚の取り方を覚えて親元から巣立つ日に向けて訓練を積んでいきます。


彼らを驚かせないように、赤外線フラッシュのセンサーカメラで撮影しています。

ここで皆さんにお願いです。
体の大きな彼らの子育てには、太くて大きな木の巣穴が必要です。
食欲旺盛なヒナには、魚が沢山いる豊かな川が必要です。
そして、人が近寄らず静かで安心して子育てが出来る環境が必要です。

近年は特に野生動物との関わり方について、色々と問題になっています。
ごく一部の方の行為ではありますが、興味本位で写真を撮ろうとしたり、軽い気持ちで彼らを追い回すようなことだけはしないで下さい。

人間が近くにいるだけで、警戒して魚を捕りに来られなくなったり、巣で子育てが出来なくなってしまいます。

「いやいや俺の知っているシマフクロウは、人間なんか気にせず魚を捕りに来ているよ。」
と言う方もいますが、それは違います。

彼らは、そこがどんなに嫌な場所でも魚を捕りに来るしかないのです。
そこにしか食べ物がないのですから。
どうかお願いします。彼らの自由を尊重してあげて下さい。