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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

利尻山登山道合同整備

2012年09月26日
稚内
 残暑の厳しかった今年の利尻島ですが、最近は秋らしい冷たい風を感じるようになってきました。ようやく秋が来たかと思っているうちに、間もなく利尻山に初冠雪の報せが届くことでしょう。

 さて、ちょっと前の話になるのですが、去る9月7日に利尻町、利尻富士町、利尻森林事務所、稚内自然保護官事務所による、登山道の合同整備を行いました。
 登山道の荒廃を防ぐため、平成17年から地形や地質に合わせて様々な工法を試しながら山頂直下のスコリア地帯で登山道の補修を行っており、今年で8年目になります。


整備作業の様子

 利尻山の上部はスコリアというもろい火山礫が降り積もっていて、それを覆う薄い土壌と植生によって固定されています。登山者が滑りやすいスコリアを避けて歩きやすい植生の上を歩くことで植生が踏まれ、踏圧と雨水等によって土壌が流失し、下層に堆積していたスコリアが顔を出します。スコリア自体もその結束力のなさから踏圧や雨水によってどんどん流されていきます。そういった悪循環が繰り返され、あるところでは3m以上も浸食され、またあるところでは数mの幅に登山道が広がっています。


通称「3mスリット」と呼ばれる浸食された登山道

 下の写真左は、先に述べたように登山者がスコリアを避けて植生に踏み込んでしまうために広がりつつある場所です。そこで、写真右のように木柵を設けて登山道の拡幅を防ぎ、植生を保護しています。
 このように、利尻山で行っている登山道補修は植生の保護、回復を主な目的としており、その目的を達成する手段として登山道の歩きやすさを向上させているのです。



 利尻島は離島という条件もあり継続的に登山道の保全にあたる人材の確保が難しく、その技術や予算も不足しているのが現状です。それでも地元の関係機関が連携し、これからも継続して技術や思いを伝えていくことが大切だと思います。そして登山者一人ひとりにも、山を守ろうとしている人たちがいることや、自分の一歩一歩が自然を壊しも守りもするのだという思いを持って登山を楽しんでもらえたらと思います。