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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

彼らの死を無駄にはしない

2013年01月09日
苫小牧
明けましておめでとうございます。
今年も、ウトナイ湖をどうぞ宜しくお願いいたします。


12月の話なのですが、酪農学園大学の獣医学生のみなさんに希少種の死体解剖を行っていただきました。

いきなり死体の話って、AR日記にはそぐわない強烈なトピックスですね。

下の方にはかなり衝撃的な内臓器などの写真もありますので、ご覧になる場合はご注意下さい。



そもそもこの死体がどういう経緯で解剖に到ったのかというと。
北海道内(北海道地方環境事務所が担当している西側半分)にて残念ながら死体で発見された個体や、傷病鳥として保護されたものの命を落としてしまったというような個体です。そんな彼らをただ火葬してしまうよりも、今後の野生動物保護に繋がる貴重なデータの一部として活用しよう、ということで今回解剖をすることとしました。
 もちろん内臓を除いた他の部位(羽毛や骨格等)も無駄にはしません。研究機関に譲渡し、様々な研究に役立ててもらいます。


今回ご協力いただいたのは指導医の先生1名、学生3名計4名の皆さんで18体の死体の解剖を行い、内臓器を摘出していただきました。


【ヒト】日差しの中で、さわやかに解剖を行う学生のみなさん。


こちらの研究室では寄生虫について研究されており、野生の希少鳥類の寄生虫はとても貴重なデータとして今後の研究に生かされるとのことです。


また野生動物は死体で発見された時点で、かなり腐敗が進んでいたり他の動物に一部を食べられていたりなど、死因を特定することはとても難しくなります。

そのため通常は個体の発見現場周辺の環境(車の交通量やビルなどの衝突物、送電線などの感電物、その他多くの野生動物にとって障害となるであろう人工物)や、個体の外傷の有無やレントゲン写真や血液検査による検査結果などから、どうして弱っているのかまたは死亡してしまったのかなどを推測しているのです。

今回の解剖は通常の判断材料にプラスして、原因究明をするうえで重要な情報となりました。

死亡原因が解れば、その予防も出来る。
今後起こりうる事態に迅速に対処できる。とまぁ、そんなに簡単な話ではありませんが、今後このデータは確実に有用なデータとして利用されていくでしょう。




【オオタカ】解剖しないと発見できなかった骨折。左第1~3肋骨が骨折しているようです。胸腔内に出血も多く、衝突死が原因と考えられます。



【オオタカ】左の個体の胸筋が非常に発達しており、胸の中央にある胸骨という骨が胸筋に覆われて見えなくなっています。右の個体は野生下では比較的普通の状態ですが、胸骨ははっきり見えています。このことから左の個体はかなり栄養状態が良く、マッチョなオオタカだったようです。


野生動物が無言で語る様々な地球の異変に耳を傾け、彼らの命を無駄にしないように日々努めて行こう!!と感じた一日なのでした。

ウトナイ湖は今・・・ほぼ完全結氷です。
湖の氷の上にはキツネかな? 色んな動物の足跡が見られますよー