アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
The world wetlands day 2013.Feb.2
2013年01月25日 2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野・クッチャロ湖など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に函館の大沼が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏・洞爺・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。今回はそのパート1ということで、ラムサール条約登録湿地の1つである「サロベツ原野」の紹介をしたいと思います。
サロベツ原野には、低地における日本最大の高層湿原があります。多種多様な湿原植物や水生植物が生育し、春から秋(5月~10月)にかけてツルコケモモやモウセンゴケ、ワタスゲ、ヒメシャクナゲ、エゾカンゾウ、カキツバタ、ヒオウギアヤメ、ノハナショウブなど100種類以上の植物が花を咲かせます。これらの植物は、豊富町のサロベツ湿原センター、幌延町のパンケ沼や幌延ビジターセンターなどで間近に観察することができます。
サロベツ原野は、オオヒシクイやコハクチョウなど多くの渡り鳥の移動ルート上にあり、その周辺の地域も含めて休息や採餌を行う場として重要な場所となっています。このサロベツ原野と渡り鳥の関わりを地元や近隣に住む人々に知ってもらうため、稚内自然保護官事務所では日本野鳥の会道北支部、利尻礼文サロベツ国立公園パークボランティアの会と協力して、秋の渡り鳥を観察するイベントを毎年開催しています。
このように、サロベツ原野には湿原、湖沼などの多様な湿地があり、様々な動植物を育んでいますが、反面、湿原の乾燥化が進んでササの分布が広がるなどの問題も生じています。これらの問題を解決するため、平成17年から環境省のほか各関係機関や団体、地域に住む人達、サロベツが大好きな人達などたくさんの人々が協力し、農業と共生しながら湿原の豊かな自然を取り戻すための取り組みが進められています。
前回のアクティブレンジャー日記(平成24年8月)でもお話ししましたが、自然再生を進めていくには、各関係機関による事業、専門家による科学的な調査やその意見を聞くだけでなく、地域の人々と協力を深めていくことも欠かせません。
そこで、地域の人々に湿原と農業の共生を目指したサロベツの自然再生をより身近に感じてもらうため、昨年の10月20日にサロベツ湿原センターでサロベツの湿原と農業の共生をテーマとしたサロベツ・エコモーDAYを開催しました。
サロベツ・エコモーDayでは、地元の農業関係者の方々など多くの地域の人々に協力をいただき、豊富牛乳を使った料理コンテストである「サロベツを食べよう」、普段は入れない泥炭採掘跡地と、地域の方が経営する農場を見学する「自然再生エコツアー」、農業用車に乗ることができる「トラクターに乗ってみよう」、普段は乗ることができないサロベツ湿原センターの浚渫船に乗ることができる「浚渫船に乗ってみよう」、自然再生の取り組みを紹介する「自然再生を知ろう」、町のおじいちゃんからサロベツ原野の開拓の歴史や自然の魅力を聞く「エコモー交流会」の6つのイベントを行い、サロベツの湿原と農業の共生を楽しみながら知ってもらう1日にすることができました。
サロベツの自然再生は、国立公園に指定された1974年当時の自然を取り戻すことを目標にしていますが、そのためにはとても長い年月を要します。この取り組みをこれからも続けていくためには、地域内外の多くの人々の理解と協力が必要不可欠なのです。
それでは洞爺湖の大塚さん、来週はよろしくお願いします!