アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
The World Wetlands Day 2013.Feb.2
2013年02月07日
支笏湖
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2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に函館の大沼が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。
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世界湿地の日AR日記企画第3弾、バトンはいよいよ支笏湖へ。
支笏湖からは、2回に分けてお送りします。
10月 休暇村前広場 展望台より 風不死岳、と樽前山一部
―支笏湖ははたして『湿地』? そもそも湿地って何だろう
湿地 wetland とは『淡水や海水により冠水する、あるいは定期的に覆われる低地』のことで、その言葉が指す範囲はとても広いです。例えば、湿原、沼、河川、サンゴ礁、水たまり…
『ラムサール条約湿地分類法』による湿地のタイプ区分(42の分類)をみると、支笏湖のような湖は『淡水湖沼』に該当します。
そう、支笏湖も立派な湿地、なのです。
かくして支笏湖AR、この湿地の日企画にめでたく参加できることとなったのです。
参考:日本国際湿地保全連合のページ(リンク)
―ワイズユースって何だろう
ラムサール条約の基本理念、それは『ワイズユース(賢明な利用)』です。
ワイズユース?
さて突然ですが!
皆さん、支笏湖温泉の街で使われる電気は、どのように供給されているかご存じですか。札幌や千歳市街から運ばれてくる?いえいえ、実は支笏湖温泉街一帯の電気は『支笏湖の水』で作られています。
というのも、支笏湖から唯一、水が出て行く川(流出河川)である千歳川には、千歳市街に流れ出るまでの間に複数の滝がありました。その天然の落差を利用し建設された王子製紙の水力発電所群(1910年、明治43年~)は、そこで生み出す電力を苫小牧市内の工場で利用するだけでなく、支笏湖温泉街一帯にも供給され湖畔の街の明かりを灯してきました。
このように支笏湖の水は二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーを生み、さらに支笏湖の治水の機能も果たすことから、その流域に住む人々に恩恵をもたらしてきました。千歳川本来の自然落差に加え、複数の発電施設の存在が『魚類の生息場所の移動を制限し生態系を分断する』という負の影響がないとはいえませんが、約100年前から稼働してきた水力発電所群の存在により、以降の大きな開発は抑えられ、今日の生態系が維持されてきたともいえるのではないでしょうか。
10月 湖畔橋より 千歳川
明治時代、支笏湖周辺の森林は御料林としてその自然が守られてきました。そしてその森に囲まれた湖と川では、水力発電という形で自然を利用しながらもそれを壊してしまうことなく人間が恩恵を受けてきました。そして現在、都市近郊でありながら原始的な自然が多く残っている、それがこの支笏湖一帯の地域です。
こんなふうに、湿地の自然を保全しながら持続的に人が利益を得る、『ワイズユース(賢明な利用)』がラムサール条約の考え方、基本理念のひとつです。全く手を付けずそのまま残す(保護)のではなく、利用しながらも壊してしまうことなく(保全)、ずっと自然から恩恵を受け続けていく。これが目標です。
…どうでしょう。『ワイズユース』、イメージがわいたでしょうか。
~2回目へ続く~
2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に函館の大沼が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。
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世界湿地の日AR日記企画第3弾、バトンはいよいよ支笏湖へ。
支笏湖からは、2回に分けてお送りします。
10月 休暇村前広場 展望台より 風不死岳、と樽前山一部
―支笏湖ははたして『湿地』? そもそも湿地って何だろう
湿地 wetland とは『淡水や海水により冠水する、あるいは定期的に覆われる低地』のことで、その言葉が指す範囲はとても広いです。例えば、湿原、沼、河川、サンゴ礁、水たまり…
『ラムサール条約湿地分類法』による湿地のタイプ区分(42の分類)をみると、支笏湖のような湖は『淡水湖沼』に該当します。
そう、支笏湖も立派な湿地、なのです。
かくして支笏湖AR、この湿地の日企画にめでたく参加できることとなったのです。
参考:日本国際湿地保全連合のページ(リンク)
―ワイズユースって何だろう
ラムサール条約の基本理念、それは『ワイズユース(賢明な利用)』です。
ワイズユース?
さて突然ですが!
皆さん、支笏湖温泉の街で使われる電気は、どのように供給されているかご存じですか。札幌や千歳市街から運ばれてくる?いえいえ、実は支笏湖温泉街一帯の電気は『支笏湖の水』で作られています。
というのも、支笏湖から唯一、水が出て行く川(流出河川)である千歳川には、千歳市街に流れ出るまでの間に複数の滝がありました。その天然の落差を利用し建設された王子製紙の水力発電所群(1910年、明治43年~)は、そこで生み出す電力を苫小牧市内の工場で利用するだけでなく、支笏湖温泉街一帯にも供給され湖畔の街の明かりを灯してきました。
このように支笏湖の水は二酸化炭素を排出しないクリーンエネルギーを生み、さらに支笏湖の治水の機能も果たすことから、その流域に住む人々に恩恵をもたらしてきました。千歳川本来の自然落差に加え、複数の発電施設の存在が『魚類の生息場所の移動を制限し生態系を分断する』という負の影響がないとはいえませんが、約100年前から稼働してきた水力発電所群の存在により、以降の大きな開発は抑えられ、今日の生態系が維持されてきたともいえるのではないでしょうか。
10月 湖畔橋より 千歳川
明治時代、支笏湖周辺の森林は御料林としてその自然が守られてきました。そしてその森に囲まれた湖と川では、水力発電という形で自然を利用しながらもそれを壊してしまうことなく人間が恩恵を受けてきました。そして現在、都市近郊でありながら原始的な自然が多く残っている、それがこの支笏湖一帯の地域です。
こんなふうに、湿地の自然を保全しながら持続的に人が利益を得る、『ワイズユース(賢明な利用)』がラムサール条約の考え方、基本理念のひとつです。全く手を付けずそのまま残す(保護)のではなく、利用しながらも壊してしまうことなく(保全)、ずっと自然から恩恵を受け続けていく。これが目標です。
…どうでしょう。『ワイズユース』、イメージがわいたでしょうか。
~2回目へ続く~