アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
The World Wetlands Day 2013.Feb.2
2013年02月18日
苫小牧
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2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に道南の大沼(七飯町)が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。
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皆さんこんにちは。
「世界湿地の日AR日記リレー」も最終回となりました。
ウトナイ湖から平がお伝えいたします。
はじめに
☆ウトナイ湖の自己紹介☆
【場所】北海道の南西部、ホッキが有名な苫小牧市の市街地から約12kmの東北方向にあります。
【名前】ウトナイはアイヌ語で「小さな川の流れが集まるところ」という意味があり、その名の通り、美々川、オタルマップ川、勇払川の清流が流れ込み、ウトナイ湖で一度合流した後、勇払川河口から苫小牧の海に流れ出ていきます。
【大きさ】湖をぐるっと一周約9km
広さ(面積)は約275ha
水の深さは平均60cm位でちょっと浅め
【湖と生き物】
【春と秋】水鳥の一大休憩ポイントとして、オオハクチョウ、マガン、ヒシクイ、カモ類などの水鳥が長旅の疲れを癒やし、湖が育む豊かなヒシ群落やコウホネなどの水草で、お腹いっぱい栄養を蓄え次の長旅に備えます。
【夏】ノビタキ、ノゴマ、エゾセンニュウ、キビタキ、などの小鳥たちの声でとても賑やかになります。彼らは湖をぐるっと囲むヨシ群落の低層湿原や、沢沿いの湿潤地域に育つハンノキ林やヤチダモ林、コナラ、ミズナラの林で、いそいそと子育てに奮闘します。その小鳥たちを狙ったオオタカなどの猛禽類も姿を見せます。地上では、エゾユキウサギやエゾリス、キタキツネなどのほ乳類も元気に走り回っています。
【冬】湖の氷の間に死んだ魚を求めて、オオワシやオジロワシも姿を見せます。
(左上)夏のウトナイ湖(右上)ヨシ群落(左下)オタルマップ川(右下)冬のウトナイ湖
【様々な保護の方法】
・1985年には環境省が国指定鳥獣保護区にウトナイ湖を定め、野生鳥獣の捕獲を禁止することで、鳥獣を保護しています。
・1991年には世界162カ国が加入する、ラムサール条約の湿地に登録され日本で4番目の登録湿地となりました。
・2006年にはガン・カモ類の生息地を保全する、EAAF東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップに参加しています。
工業都市である苫小牧市の中で、生き物たちのオアシスのような存在のウトナイ湖は、上空から見るとまるで北海道のような雄大な姿をしています。
さて、湿地に話を戻して。
各ARの湿地日記を読んでいただくと、かなり湿地の自然環境について詳しくなられたのではないでしょうか?
最終章では、「湿地のワイズユース」についての振り返りと、ワイズユースに伴う良いニュース・悪いニュースを紹介し、もう一度自然との付き合い方について深く考えて行きましょう!!
☆湿地のワイズユースって何?☆
私たち人間や、その他の生き物にとって、「水」は命の源。
そんな大切な水を取り巻く環境を、すべての生き物で仲良く分け合い、大切に利用して行こう!! という考えを湿地のワイズユースと言います。(かなり噛み砕いた解釈ですが。)
それでは、湿地は誰がどの様に利用しているのでしょうか?
【動物たち】生活の場所、エサを食べる場所として
【植物たち】生活の場所、水の浄化作用、水をため込むスポンジ効果、光合成で二酸化炭素を取り込む、他の動物へすみかを提供するなど
【私たち】飲み水の確保、食料の確保(田んぼも湿地なんですよ。お米は湿地の恵み。川や海の浅瀬も湿地なので、魚や貝も湿地の恵み。)、観光など自然と触れ合うレクリエーションの場として
(左上)オジロワシがエサを捕る場所として利用(右上)木が鳥の家を提供(左下)ルールを守って自然を楽しむ(右下)ウトナイ湖の漁師さん
ふむふむ。
私たちは、湿地の恩恵によって美味しいご飯を食べたり、おいしい水を飲んだり、心を癒やしてもらったりしているんですね。
さてさて、なにやら良いニュースが聞こえて来ましたよ。
GOOD News湿地のツーリズム
➀観光や、釣りにカヌー、自然散策と様々なアクティビティを通して豊かな自然に触れることで、自然環境を保全する意識を高める教育の場となっています。
➁多くの人が訪れることで観光収入が得られ、雇用も生み出します。またそのお金を環境保全活動にも役立てています。
そんなツーリズムから悪いニュースも聞こえてきました。
BAD Newsツーリズムの圧力
➀人が多く集まると、どうしてもマナーの問題が浮き彫りになります。ゴミをその辺に捨てたり、野生動物にエサを与えたりなど悲しい現実を目にすることがあります。
ゴミは水質を悪化させたり、動物が謝って飲み込んだりと命を左右する大きな問題です。
野生動物にエサを与える行為は、野生動物に人間から食べ物を得る事を覚えさせ、無用な争いを生み出します。
➁自然を体験するアクティビティでは、一部のダイバーが珊瑚礁を踏みつけて傷つけたり、釣り人の捨てた針が動物の命を奪ったりと取り返しの付かない問題が起きています。
➂野生動物写真の撮影など、過度な接近により繁殖や生息地を撹乱してしまうなど、いわば動物に対するハラスメント行為(迷惑行為)が問題になっています。
今回の「世界湿地の日・AR日記リレー」をきっかけに、川や海や森や動物たちが、私たちの生活を支えてくれていることを知っていただけたと思います。
では私たちは何を彼らに返すことが出来るのか。
まずは、身近な事から始めてみませんか?
ヒントは今回の「世界湿地の日・AR日記リレー」に隠されているはずですよー!
2月2日は、ラムサール条約が締結された日として「世界湿地の日(The world wetlands day)」に定められています。そのため世界各地では、2月2日の前後に湿地にちなんだ様々なイベントが開催されています。
そこで、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・サロベツ原野など、日本の代表的な湿地を含む国立公園等を所管する北海道地方環境事務所では、平成24年9月24日に北海道の新たなラムサール条約登録湿地に道南の大沼(七飯町)が登録されたことを記念して、ウトナイ湖・支笏湖・洞爺湖・利尻礼文サロベツのアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行うことにしました。
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皆さんこんにちは。
「世界湿地の日AR日記リレー」も最終回となりました。
ウトナイ湖から平がお伝えいたします。
はじめに
☆ウトナイ湖の自己紹介☆
【場所】北海道の南西部、ホッキが有名な苫小牧市の市街地から約12kmの東北方向にあります。
【名前】ウトナイはアイヌ語で「小さな川の流れが集まるところ」という意味があり、その名の通り、美々川、オタルマップ川、勇払川の清流が流れ込み、ウトナイ湖で一度合流した後、勇払川河口から苫小牧の海に流れ出ていきます。
【大きさ】湖をぐるっと一周約9km
広さ(面積)は約275ha
水の深さは平均60cm位でちょっと浅め
【湖と生き物】
【春と秋】水鳥の一大休憩ポイントとして、オオハクチョウ、マガン、ヒシクイ、カモ類などの水鳥が長旅の疲れを癒やし、湖が育む豊かなヒシ群落やコウホネなどの水草で、お腹いっぱい栄養を蓄え次の長旅に備えます。
【夏】ノビタキ、ノゴマ、エゾセンニュウ、キビタキ、などの小鳥たちの声でとても賑やかになります。彼らは湖をぐるっと囲むヨシ群落の低層湿原や、沢沿いの湿潤地域に育つハンノキ林やヤチダモ林、コナラ、ミズナラの林で、いそいそと子育てに奮闘します。その小鳥たちを狙ったオオタカなどの猛禽類も姿を見せます。地上では、エゾユキウサギやエゾリス、キタキツネなどのほ乳類も元気に走り回っています。
【冬】湖の氷の間に死んだ魚を求めて、オオワシやオジロワシも姿を見せます。
(左上)夏のウトナイ湖(右上)ヨシ群落(左下)オタルマップ川(右下)冬のウトナイ湖
【様々な保護の方法】
・1985年には環境省が国指定鳥獣保護区にウトナイ湖を定め、野生鳥獣の捕獲を禁止することで、鳥獣を保護しています。
・1991年には世界162カ国が加入する、ラムサール条約の湿地に登録され日本で4番目の登録湿地となりました。
・2006年にはガン・カモ類の生息地を保全する、EAAF東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップに参加しています。
工業都市である苫小牧市の中で、生き物たちのオアシスのような存在のウトナイ湖は、上空から見るとまるで北海道のような雄大な姿をしています。
さて、湿地に話を戻して。
各ARの湿地日記を読んでいただくと、かなり湿地の自然環境について詳しくなられたのではないでしょうか?
最終章では、「湿地のワイズユース」についての振り返りと、ワイズユースに伴う良いニュース・悪いニュースを紹介し、もう一度自然との付き合い方について深く考えて行きましょう!!
☆湿地のワイズユースって何?☆
私たち人間や、その他の生き物にとって、「水」は命の源。
そんな大切な水を取り巻く環境を、すべての生き物で仲良く分け合い、大切に利用して行こう!! という考えを湿地のワイズユースと言います。(かなり噛み砕いた解釈ですが。)
それでは、湿地は誰がどの様に利用しているのでしょうか?
【動物たち】生活の場所、エサを食べる場所として
【植物たち】生活の場所、水の浄化作用、水をため込むスポンジ効果、光合成で二酸化炭素を取り込む、他の動物へすみかを提供するなど
【私たち】飲み水の確保、食料の確保(田んぼも湿地なんですよ。お米は湿地の恵み。川や海の浅瀬も湿地なので、魚や貝も湿地の恵み。)、観光など自然と触れ合うレクリエーションの場として
(左上)オジロワシがエサを捕る場所として利用(右上)木が鳥の家を提供(左下)ルールを守って自然を楽しむ(右下)ウトナイ湖の漁師さん
ふむふむ。
私たちは、湿地の恩恵によって美味しいご飯を食べたり、おいしい水を飲んだり、心を癒やしてもらったりしているんですね。
さてさて、なにやら良いニュースが聞こえて来ましたよ。
GOOD News湿地のツーリズム
➀観光や、釣りにカヌー、自然散策と様々なアクティビティを通して豊かな自然に触れることで、自然環境を保全する意識を高める教育の場となっています。
➁多くの人が訪れることで観光収入が得られ、雇用も生み出します。またそのお金を環境保全活動にも役立てています。
そんなツーリズムから悪いニュースも聞こえてきました。
BAD Newsツーリズムの圧力
➀人が多く集まると、どうしてもマナーの問題が浮き彫りになります。ゴミをその辺に捨てたり、野生動物にエサを与えたりなど悲しい現実を目にすることがあります。
ゴミは水質を悪化させたり、動物が謝って飲み込んだりと命を左右する大きな問題です。
野生動物にエサを与える行為は、野生動物に人間から食べ物を得る事を覚えさせ、無用な争いを生み出します。
➁自然を体験するアクティビティでは、一部のダイバーが珊瑚礁を踏みつけて傷つけたり、釣り人の捨てた針が動物の命を奪ったりと取り返しの付かない問題が起きています。
➂野生動物写真の撮影など、過度な接近により繁殖や生息地を撹乱してしまうなど、いわば動物に対するハラスメント行為(迷惑行為)が問題になっています。
今回の「世界湿地の日・AR日記リレー」をきっかけに、川や海や森や動物たちが、私たちの生活を支えてくれていることを知っていただけたと思います。
では私たちは何を彼らに返すことが出来るのか。
まずは、身近な事から始めてみませんか?
ヒントは今回の「世界湿地の日・AR日記リレー」に隠されているはずですよー!