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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

春の探鳥会

2013年05月17日
稚内
 北端の利尻島でも、最近は朝晩暖房をつけなくても過ごせる程度に暖かくなってきました。島の中を歩いていると、巣材を口に咥えたハシブトガラスや、高らかに鳴き交わすノゴマに出くわす事もあります。この島にも、ようやく遅い春がやってきたようです。

 さて、利尻島では5月5日に利尻町立博物館主催による探鳥会が行われました。
 下記の写真にあるように、捕えた鳥を記録し足環を付けて放鳥する鳥の標識調査の見学をさせていただいたり、調査のために利尻島を訪れていた獣医の卵である酪農学園大学野生動物医学センターの学生さんにお話しを伺ったり有意義な時間を過ごさせていただきました。


(左:鳥の標識調査の見学の様子(提供:利尻町立博物館 佐藤雅彦氏)) 
(右ルリビタキの雄)
 
 学生さん達の話の中で印象的だったのは、「保全医学」という学問についてのお話です。人の健康、動物の健康、生態系の健康の重なりに着目し、人間以外の健康も人間に関係あるものとして研究していこう、という考え方の学問だそうです。


(学生さんよるプレゼンテーションの様子)
 
 利尻島では、利尻山の登山道の崩壊や植生の荒廃が問題となっていますが、これは保全医学で言うところの「生態系の健康」が脅かされている状態にあたるのかもしれません。そして植生の荒廃は、登山道の崩壊を加速させ、登山道の崩壊は、足場を悪くし滑落事故を引き起こしやすくするなどの「人間の健康」を脅かす事になる…。聞きかじりの知識でしかありませんが、「保全医学」という視点で利尻山について考えると、そんな繋がりが見えてくるように思いました。

 人間は人間だけで生きているわけではなく、動物や環境もまた、それだけで存在しているのではありません。良しにつけ悪しにつけ、相互に影響を及ぼし合っています。生きていく中でいつも頭の隅に置いておきたい考えです。


(探鳥会参加者での記念撮影!(提供:利尻町立博物館 佐藤雅彦氏))