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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

野生動物の救護とは

2013年07月12日
苫小牧
みなさんこんにちは。 

7月の6・7日に帯広で開催された「傷病野生鳥獣
救護講習会」に参加してきました。

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主催:公益財団法人北海道獣医医師会、十勝獣医師会
協力:野生動物救護研究会

~1日目~
■講演
➀「アフリカの野生動物にとっての救護とは?」
中村千秋さん(アフリカゾウ国際保護基金客員研究員)
※経歴についてはAR日記のバックナンバー「ウトナイ湖野生鳥獣保護センターでアフリカゾウについて学ぶ」をご覧下さい。

➁「野生動物の保全と獣医学」
福井大祐さん(NPO法人EnVision環境保全事務所、元旭山動物園の獣医さん)

■野生動物救護の事例発表
・交通事故にあったノスリとオオワシのリハビリ、術後管理など
・洋上で保護されたセイタカシギの野生復帰まで
・傷病個体の寄生虫検査、保全医学の観点から
・タスマニアデビルの保護活動の報告
・フィリピンの海洋調査と環境教育の報告

~2日目~
■野生動物救護技術実習
「野生動物のハンドリング、診断、応急処置と管理」
・鳥の保定(鳥も人間も安全に治療が行えるように、鳥の動きを制限する方法)
・診断(外傷や骨折の有無、脱水症状の判断)
・胃カテーテルでの保液(脱水の治療として水分を与える方法)
・注射法(採血、筋肉注射、皮下注射など)
・翼の固定法(8の字包帯)
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中村さんの言葉はすんなりと心に入ってきます。こんなふうに伝えられる人になりたいな~。



久々の白衣はなんだか新鮮。皆さん積極的に獣医師の指導を受けています。



栄養学は救護にとっても大切! 本当に勉強になりました。

~講習会を終えて~
環境省 北海道地方環境事務所は、種の保存法・鳥獣保護法に掛かる希少な鳥獣、鳥獣保護区内で保護された野生鳥獣について救護が必要な場合(人間活動等によって傷ついた)、保護収容し治療を行い、自然界に返すということを行っています。

人間活動によって傷ついたとはどういうことかと言うと。

たとえば
・私たちの家に必ずある窓
空が反射して窓に気づかず、衝突してしまうケースが多くあります。

・夜間の道路では
キツネやシカ、タヌキなどが道路によって分断された森を行き来するために、交通事故にあっています。

・山の中の送電線では
自然豊かな森の中に異様な姿でそびえ立つ送電線で、多くの鳥が感電死しています。

どれも私たちの生活を豊かにしてくれるなくてはならない物(人工物)です。
どうしても無くてはならないのかは、別の機会に議論しましょう。


では、今回の講演者の中村さんが研究している、アフリカの大地ではどうでしょうか?
少なくともケニアの国立公園には、今もなお野生動物が安心して(人間と決別して)暮らせるほんの少しのスペースが残っています。

講演の中での中村さんの言葉がすごく耳に残りました。
「日本に帰ってくると、ついに人間はここまで自然を破壊したのかと、罪の意識を感じる。」
とおっしゃっていました。
普段は、ケニアに住んでいる中村さんは人間が地球に出現する前の自然を目にしているので、日本の変わり果てた様子に愕然とするそうです。


さて、講習会は2日間に渡って行われたのですが、その間常に話題に上ったことがありました。
それは、野生動物を救護するという本質の意味についてです。

人間が介入し、その影響で傷ついた野生動物がいるのならば、治療することにも重要な意味があると思います。

目の前の命を救いたいと思うのは自然なことだと思います。

しかし、そもそも人間の救護が必要になったその時点で、その場所の自然環境は崩壊しているのではないでしょうか?


私たちの豊かな生活を支えている、様々なもの
それによって傷ついた生き物は、破壊された自然からの悲痛なメッセージなんだということを、もう一度深く考えさせられました。

そして、動物たちからのSOSのメッセージを受け取る仕事に、身を置いている私の責任は、感じていた以上に重いものだと思い知らされました。

最前線を担っている現場の方々の指導を受け、やる気満々充電完了です!!

私に出来る事、それは一人でも多くの人に、このSOSのメッセージを届けることだと思います。



ウトナイ湖野生鳥獣保護センターでは、色々な方法でこのメッセージを知ることが出来ます。
是非、センターに足を運んでいただいて、生き物たちの輝きを感じて下さい。
【最新のイベント】http://www.city.tomakomai.hokkaido.jp/kankyo-seikatu/utonaikohp/13nenkangyouji.pdf
・傷病鳥獣救護講座 7月20日 
・夏のウトナイ湖ウォークラリー ほぼ毎週土日
・野生動物に学ぶ救護セミナー 9月29日

月曜日以外の毎日、開館していますので、お気軽にお越し下さい。
明るく優しいスタッフがウトナイ湖の魅力を全力でお伝えしていますよ!!