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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

ウトナイ湖・渡り鳥フェスティバル

2013年10月29日
苫小牧
皆さんこんにちは!!

ご無沙汰をしておりました。
今回は、先日、ウトナイ湖野生鳥獣保護センターで行われた「ウトナイ湖・渡り鳥フェスティバル」のお話をさせていただきます。

ウトナイ湖は言わずと知れた、渡り鳥の一大休憩地です。
皆さんも春や秋にウトナイ湖を訪れた際に、オオハクチョウを始め、マガン、ヒシクイ、オナガガモなど多くの渡り鳥の群れを見た方も多いかと思います。

今回のイベントでは、いかにウトナイ湖が渡り鳥にとって重要な場所であるかを、より多くの方に知っていただき、後世に残していくことの重要性を伝えるために開催いたしました。

当日は
・ハクチョウの○×クイズ大会
・Dr牛山(宮島沼水鳥・湿地センターのマガン研究者)の渡り鳥講座 
・望遠鏡を手に、渡り鳥の野外観察
・落ち葉や流木を使った工作や、毛糸を使ったポンポン鳥の製作などなど、盛り沢山の内容となり、大賑わいでイベントを終えることができました。

お越しいただいた皆様、ありがとうございました。


イベントで作成したポンポン鳥の「ミコアイサ」




左上:大盛況の工作コーナー  右上:受付係の髙瀬レンジャー(左)
左下:湖岸からマガンやオオハクチョウを観察 右下:Dr牛山の渡り鳥講座

イベントでは、渡り鳥とウトナイ湖の関係について、大切な事を学ばせていただきました。
その中でも心に残ったマガンの渡りについて、お話させていただきます。

------マガンと渡りとウトナイ湖------



極東ロシア(シベリア)では、氷に閉ざされ大地で長い眠りについていた植物が、夏の日差しを浴びて、一斉に若い芽を出します。
夏は生き物が、最も命を輝かせる瞬間ではないでしょうか。

6月、マガンのペアは、草原に草や枝を重ねて巣を作り、メスが巣の中に卵を産んで温めます。
その横でオスは、敵に卵が捕られないように見張っています。
7月、卵がかえるとヒナは、元気いっぱいで夏に大量発生する蚊(重要なタンパク源)や、柔らかな新芽の水草などを食べて、ぐんぐん大きくなります。
8月、親と同じくらいの大きさになったヒナと両親は、ロシアの大地が氷に閉ざされる前に、エサを求めて約3000kmの旅に出ます。



生まれて半年も経たないヒナにとって、この旅はあまりにも過酷な試練となるでしょう。
途中、大嵐に遭遇することもあるでしょう。
また、向かい風では羽ばたいても羽ばたいても、前に進めないかもしれません。
それでも羽ばたきを止めることは出来ません。
厳しい自然界の中では、羽ばたきを止めることは、そのまま死に直結してしまいます。
朝も昼も夜も、ただ前を向きVの字を作って目的地を目指します。

こうして、へとへとになりながら、彼らはウトナイ湖へやってくるのです。そして、このウトナイ湖で小休憩をして、本格的な冬を前にもっと暖かい南へ渡るために、お腹いっぱいエサを食べます。



ふたたび、長い旅に出たマガン親子は、越冬地である宮城県を目指します。
この地で冬を越し、春の渡りに備えるのです。



夏の豊富なエサを求めて、ロシアを目指して旅立ちます。
途中、ウトナイ湖で旅の疲れを癒やしながら。

次の年も、そのまた次の年も長い長い旅を繰り返しているのです。


渡り鳥が、ウトナイ湖で休むことが出来なくなってしまったら、彼らはどこで次の渡りの準備をすればいいのでしょうか?
安心して休める場所を見つけられるのでしょうか?


皆さんも、空高くから「グァーグァー」と声が聞こえたら、彼らの旅を思い、旅の安全を祈ってあげてください。



先頭はお父さんマガンかな? 夕方に近くの畑から帰ってきたマガンの連隊です。