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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

ワシの体臭

2014年01月29日
ウトロ
冬の知床半島ウトロは、流氷で海に蓋がされるまでの間、天候が荒れることが多いのですが、この日は久しぶりに気持ちの良い快晴でした。通勤時に半島中央部を走る峰々が白く輝くのが見え、もう朝から有頂天。週末が待ち遠しい!と浮かれていたところへ鳴る電話。

「ワシが列車にひかれた、まだ生きている」

オオワシかオジロワシと思われる大型の猛禽類が、釧網本線止別~浜小清水間で列車にはねられ、線路脇にうずくまっているとのこと。エマージェンシー!即出動!

このような傷病を負った希少動物が道東地域で発見された場合、釧路湿原にある野生生物保護センターへただちに担ぎ込まれ、集中治療がおこなわれます。ただし一口に道東と言っても広く、今回傷病ワシが発見された小清水町止別から保護センターまでは約2時間。そのため、川湯自然保護官事務所を中継地点にして、リレー搬送です。現場へ向かう道中、救急車が緊急走行しているのを見てパトランプがほしくなりました。


かくして到着。JRの方に案内していただくと……いました。オオワシです。




傷病ワシの捕獲訓練は受けていますが、実戦は初めてということもあり、緊張します。しかも次の列車が来るまであと20分。その前に線路から待避しなければならないので、ゆっくりしている暇はありません。

というわけで腹を決めて、




  こうして!!!




  こう!!!!!



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後日、治療を受けたオオワシの予後を聞きました。腰骨の骨折が致命傷となり、残念ながら息を引き取ったそうです。
オオワシは線路付近でエゾシカ肉を食べていて、列車にはねられたとのこと。風力発電の風車にバードストライクしたり、銃猟で鉛弾を撃ち込まれたシカを食べて鉛中毒になったりと、ワシ類は私たちの生活の影響を、目に見えて受けています。

腕にかかえた際に上着へ移った、今は亡きワシの体臭の残り香に、なにか、物思わずにはいられない心地がしました。