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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

春の香り

2014年03月20日
東川
3月も半ばを過ぎ、待ち構えていたドカ雪も降らず、東川町はみるみる雪解けが進んでいます。
乾いた冬は終わり、チョロチョロと雪が溶け出し、湧き立つ匂いも、周囲から聞こえてくる音も、冬から初春へ確実に季節が移り変わっているのを感じています。
膨らんだ冬芽は本当に美味しそうで、冬芽をかじる動物の気持ちがよくわかる…。

先日、美瑛町の白金野鳥の森の野鳥観察舎と四阿(あずまや)の屋根の雪下ろしに行きました。
両施設とも老朽化が進んでいるため、雪に押し潰されていないか心配でしたが、ワンシーズン分の雪をずっしり蓄えたまま現存していました。


ゾンデ棒で積雪量チェックした結果、なんと積雪1.9m。自分の身長よりも高い!!
積もり積もった数か月分の雪は固く、掘っても掘っても屋根が現れず、ふんぞり返ったり、心が折れたりしながら、佐藤自然保護官と丸二日かかってなんとか観察舎と四阿、両施設とも雪下ろしを終えました。
今年一番冬を感じた作業で、アクティブレンジャーになって一番の重労働でもありました…。



【とある一日の作業風景】

作業中、ふと腰を延ばしたとき視界の端に、深い雪の上を音も立てず、しなやかに歩いている一匹のキタキツネが映りました。
厳しい冬を毛皮一つで生きぬく野生の逞しさ、気高く凛とした一直線の足跡、何一つ違和感なく自然と調和している光景に少しの時間でしたがグッと引き込まれてしまいました。

普段自分が過ごしている時間とは別の、人間の尺度とは無関係のもう一つの時間が自然界にはあるような気がします。
ダウンを着込み、手袋の換えを何枚も持ったり、スキーを履いてドタバタとしか雪上を歩けない自分にジレンマを感じつつ、今この時も流れているもう一つの大いなる時間を想うとフッと胸が軽くなるような気がします。

しつこく寒さと軽い雪を求めていましたが、そろそろ覚悟を決めて土の感触を恋しがってもいい時期しれませんね。
夏山の季節が来たら冬はまだ来なくていい、と言っている自分が目に見えます。

来年度も大雪山のアクティブレンジャーとして勤務できることに感謝をしながら、初心を忘れず、大好きな大雪山で業務に励みたいと思います。



静かな野鳥の森ではいつも動物に出会えます。