北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

コンパスヨシ!地形図ヨシ! ゼロ災でいこう!!! ヨシ!!!

2014年09月05日
ウトロ
窓を開けっぱなしで寝ていて、朝方5時頃、寒さで目が覚める……秋を意識せざるを得ない知床国立公園・ウトロの高橋です。ですが個人的にはまだまだ夏です!登ってますか皆さん!!登ってますか夏山!!!

今夏、知床では山岳遭難が3件発生しています。そのうち2件は道迷い、1件は滑落による死亡事故という、例年に比して事故の多い年になりました。また、いずれの事案も硫黄山周辺で起きているのが特徴です。硫黄山上部は、枯れ沢やガレ場など道無き道を進む部分も多く、ガスや悪天で視界が開けないと非常にルートを見失いやすい場所です。

さてそんな中、8月の知床連山巡視を実施しました。今回は件の硫黄山登山口から入山し、1日目は第一火口野営指定地、2日目は二ツ池野営指定地に宿泊しての二泊三日行程です。


第一火口上部から、南岳・オッカバケ岳を望む

行程1日目、硫黄山直下の分岐を過ぎ、第一火口野営指定地へ向かって歩き出したその時です。どこからともなく「オーイ」と引き止める大声が聞こえてきました。声の出処は……硫黄山の山頂でした。「カムイワッカはどっちに降りマスカー!」どうやら外国人の方らしく、英語と日本語が入り混じります。我々も拙い英語を交えつつ説明するものの、山頂にいる彼らとの間には縦方向に50~60m程離れているため、叫んで説明したところで埒が明きません。


硫黄山山頂から呼び声が聞こえる

もう直接行って話そう、と登っていこうとしたところ、向こうも同じくしびれを切らしたのか、山頂から降り始めまし……ってそっち登山道じゃないですよ!その下思いっきりガケですよ!「硫黄山でまたも遭難、滑落事故(今期4件目)」という大見出しが紙面に躍る光景が脳裏に浮かび、慌てて正規の登山道の方へ走り、誘導しました。

「Oh, sorry.」「ゴメンナサーイ」と言いながら降りてくる彼ら3人は、聞くとベルギーからやってきたとのこと。硫黄山の山頂へ登ったはいいが、登山道を見失い、どこから降りるのか分からなくなった様子。地図はガイドブックに載っているものしか持っていないという話だったので、予備に持っていた地形図を渡し、登山口があるカムイワッカへの経路と所要時間、下山後のシャトルバスはこの時期走っていない旨等々、下山についての情報を伝えると、足早に下山していきました。


硫黄山直下を足早に降りていくベルギー人登山者3名

一人の方は左手に包帯を巻いており、本当に大丈夫なのか尋ねると「指がBroken.」と笑顔で、心身ともに余裕があるようでしたが……9月はまだまだ夏山シーズンとはいえ、気温は大分低くなり、寒さは体力を奪います。知床での山登りを予定している方は、山と高原地図だけではなく必ずコンパスと地形図を、それから万が一のビバークに対応できるよう予備の食料やツェルトを携行し、安全に登山をお楽しみください。