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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

外来種(オオアワダチソウ)を駆除して草木染めをしよう。

2014年10月28日
羅臼
みなさんこんにちは。
去る9月28日、羅臼町農林漁業体験実習館で「秋祭り」が開催されました。

このお祭りは、羅臼町女性団体連絡協議会、羅臼漁業協同組合女性部、羅臼町商工会女性部が立ち上げた「知床スミレ・エコプロジェクト」が開催するものであり、今年度で第6回目の開催となります。
同プロジェクトは、環境問題や地産地消への取り組みをはじめ、環境保全活動を通して町内の女性達を中心とした地域作りをすることを目標としています。

秋祭りは、地産地消として羅臼ならではの豊かな食材を使ったメニューの販売、リサイクルを目的としたフリーマーケット。環境に負担の少ない手作り石けんの作成体験などが催され、多くの町民の方が訪れる大変賑やかなお祭りです。

羅臼自然保護官事務所のアクティブ・レンジャーも、この秋祭りにブースの出展を行いました。
出展の主な内容は、「町内の皆様へ向けた自然情報の発信」、「環境保全活動の普及啓発」など、これらを「多くの方に、楽しみながら知っていただく。」ことを目的として、平成24年度よりブースの出展をしています。

過去には、ヒグマとの付き合い方をテーマにしたパネル展や、特定外来生物に指定されているセイヨウオオマルハナバチの捕獲イベント、羅臼の生き物の塗り絵・お絵かきコーナーなどを出展し、幅広い年齢層の方に来場していただいています。

そして、第3回目の出展となる今年度は、外来種の駆除と駆除した外来種を用いた「外来種で草木染め体験」を行いました。

明治時代にヨーロッパから化学染料が輸入されるまで、日本人は草花や樹木、また果実などを用いて衣類を染めてきました。
駆除後に残った外来種でも草木染めは充分可能であるため、身近な外来種のことを羅臼町の皆様に知っていただきたく、ブースの出展を行いました。
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出展準備として、まず草木染めに使う外来種を採取します。
今回は、羅臼町内に生息する外来種、ムラサキツメクサ、キヌガサギク(アラゲハンゴンソウ)、オオアワダチソウを採取しました。

↓の写真は、北アメリカ原産のオオアワダチソウです。在来種と競争し、駆逐する恐れがあるとされています。
駆除の為、根から引き抜きぬいた後は、草木染めに使用する黄色い頭状花の部分だけを摘み取ります。


採取してきた植物は、秋祭り開催までに時間があるので、腐らないように乾燥させておきます。


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次に、実際に採取してきた植物で布を染めてみます。
布に植物の成分を定着させる、草木染めには欠かせない媒染ですが、今回は環境への影響の負担が少ないミョウバンと、木酢鉄を使用しました。


写真は、オオアワダチソウで染めたものです。

木酢鉄に漬けると、渋~い緑色に。
ミョウバンに漬けると、あざやかな黄色になりました。
まるで、オオアワダチソウの葉と、花の色が、そのまま布に現れたようです。

ムラサキツメクサの花でも染めてみたのですが、花のような鮮やかな紅紫色には染まりませんでした…。
残念ですが、今回の出展では欠番です。
キヌガサギク(アラゲハンゴンソウ)は、採取した量が少なかったためにアカツメクサと同様に欠番です。(採取した量が少ないという事は、生息数が少ないという事ですので、喜ばしい事です。)

あとは、本番の出展に備えるのみです。
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秋祭り当日は、小さな子供と保護者の方、知床スミレ・エコプロジェクトの奥様方、ご年配の方など、多くの方にオオアワダチソウでの草木染めを体験して頂きました。

参加者の皆様からは、
「一体どんな植物で染めているの?」
「オオアワダチソウは一体どんな植物?」
「羅臼のどこに生えているの?」といった質問が多く寄せられました。

今回の出展では、駆除の対象である外来種を用いましたが、参加者の方々に、植物や自然に対する興味を引きつけることができたと実感しました。

外来種は、自ら日本国内へ侵入したのではなく、意図的・非意図的に人間によって運び込まれました。そして、外来種はただ生きているだけで在来種と競争して駆逐する恐れがあります。

普及啓発を行う際は、新たに日本に持ち込まれて駆除の対象となる生物が増えないように、駆除と外来種侵入防除を兼ねての、レクチャーを心がけて、行っていきたいと考えています。

また、小学校に上がる前の子供~低学年の児童などは、「外来種」という言葉の意味が理解できないかもしれません。ましてや、楽しいお祭りの場で、難しい単語がでてくると一気に興味を失ってしまいます。(興味津々で色々な質問をしてくる生き物が大好きな子供も時折います。)

そのような子供たちに対しては、大きくなった時に環境問題をすんなりと理解する下地になると信じ、草木染めを通じて植物に興味をもってもらうことに重きをおきました。

今回の草木染めに限らず、普及啓発活動は結果がすぐにはわかるものではありませんが、とりあえずは皆様の笑顔を見れて、何よりです。

今後も、多くの年齢層の方に対して、環境保全の普及啓発を実施していきたいです。


--※ご注意ください※外来種で草木染めをしたくなった皆様へ。--
○オオハンゴンソウなどの特定外来種生物を生きたまま他の場所に運ぶことは規制されています。詳しくは環境省の外来生物法のホームページをご覧ください。
○特定外来生物に限らず、外来種の安易な運搬は生息域の拡大に繋がる恐れがあります。外来生物を採取する場合は、取り扱いに充分ご注意ください。
○ご近所で、特定外来生物に指定された植物を発見した場合は、最寄りの自然保護官事務所か、地域のビジターセンターなどにご連絡いただきますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。