アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
海からの贈り物(約7m)
2014年11月13日
これが何なのかお分かりでしょうか。知床国立公園・ウトロの高橋です(画像の物体が高橋だという意味ではありません)。
さかのぼること2週間前、知床世界遺産センターを訪れた観光客の方から「ウトロへ来る途中、バスの中から見えたんだけど、あれは何?」という問い合わせがあり、現地へ確認に向かいました。沿岸道路の約4m程下方、ゴロタ浜の波打ち際に打ち上げられていたのが、これです。
対応に当たってくださった知床財団の方曰く、「体長は約7m、ハクジラの仲間だと思うが......」とのこと。車が入れない場所なので動かすのは容易でないが、幸い人が来るような場所ではないので、ひとまず様子を見ましょう、ということで解散になりました。
(ムゥゥ......これはデカい......実にデカいぞッ!!!!!)
個人的に、男性は子供から大人まで年齢問わず、「大きなもの」(怪獣・恐竜、巨大ロボット、大型の車・バイクetc...)に惹かれる傾向があるように思います。
そんなわけでもはや仕事とプライベートの垣根無く、近くを通りがかった際には車を停め、経過を観察していました。「どんどん鳥や狐に食べられて骨になっていくに違いない」と想像していましたが、予想に反して一週間経ってもほぼ丸のまま残っています。せいぜい時折カモメが腹に乗ってつつくぐらいです。
聞けば、死骸とはいえこれだけ皮膚が分厚いと、食い破れる動物は限られてしまうのだそうです。カモメやカラスのクチバシでは、比較的柔らかい目の周りぐらいしか食べることができません。もっと大型で鋭いクチバシや爪・牙をもった動物、すなわちオオワシ・オジロワシやヒグマといった動物が先んじて開封してくれないと、小さな動物達は餌を目の前にしていながらありつけないのです。これはもどかしい!実際に皮膚を触ってみましたが、表面はドゥルドゥルのゲル状物質に覆われているものの、その下は固くガチガチで、弾力性の無いゴムのような感触です。納得です。
さてそんなこんなで先週の土曜、またそばを通ったので覗いてみると......いずれこうなるだろうと覚悟していましたが、遂にその日が来てしまいました。クジラは再びオホーツクの荒波に乗って旅立っていった後でした。ありがとうございました。
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知床の浜辺には時折、こういった海生哺乳類の亡骸が流れ着くことがあります。初見は衝撃的でしたが、だんだん「ワシやヒグマが海からの贈り物のラッピングを解いてくれる、その瞬間を楽しみに待つ鳥や狐たち」そんな光景に見えてきて、何かの死が何かの生を支えているのだと、しみじみ感じています。