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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

World Wetlands Day ~February 2, 2015~

2015年02月02日
苫小牧 平 尚恵

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世界湿地の日とは、1971年2月2日にイランのラムサールという街で締結された「ラムサール条約」を記念して、毎年2月2日を「世界湿地の日 World Wetlands Day (WWD)」とした記念日です。ラムサール条約の目的である、湿地の恩恵や価値に目を向け、その維持と賢明な利用を達成するため、世界中で啓発イベントが行われています。

そこで一昨年に引き続き、ウトナイ湖、支笏湖、洞爺湖、クッチャロ湖、サロベツ原野など、北海道の代表的な湿地を含む国立公園等を所管するアクティブレンジャーで、AR日記のリレー企画を行います。

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第一弾は、野鳥の楽園「ウトナイ湖」からスタートです!!

ー ウトナイ湖のご紹介 ー

 ウトナイ湖は周囲9km、面積275ha、平均水深1.2mの淡水湖で、およそ6000年前は海の一部でした。その後、長い年月を掛け、海流に運ばれた砂が少しずつ蓄積し、さらに地球全体の海面が下がったため、勇払原野一帯は広い砂浜となり、やがて砂浜には草が生えて原野となり、そこに美々川から注ぐ水が溜まりウトナイ湖となりました。

 また、野鳥の楽園の名にふさわしく、ウトナイ湖では現在までに360種もの野鳥が確認されています。

 日本で確認されている種数が約630種ですから、日本中の半分以上もの鳥がウトナイ湖に訪れたことになります。

 野鳥だけでなく様々な生き物に必要とされているウトナイ湖は、その重要性が認められ法律や条約によって今の自然環境を残すべく保護、保全されています。

・国指定鳥獣保護区 ― 1982年(昭和57年)

・ラムサール条約湿地 ― 1991年(平成 3年)

・東アジア・オーストラリア地域渡り鳥性水鳥重要生息地ネットワーク ― 2006年(平成18年)

ー 野鳥と人 近づきすぎず、気持ちの良い距離で ー

 ウトナイ湖には、訪れた皆さんに豊かな自然を感じていただけるように、自然観察路を設置しています。

 この木道、昨年の春に改修工事を終え、ピカピカのNew木道になりました。

新しくなった木道の休憩ポイント

 そして!! この木道完成までには、我々の熱い思いが込められています。

 元の木道は湖岸横をずっと漁師さんの浜辺まで歩くことができました。しかし、新しい木道の路線計画では、環境省として「野鳥の生息地の保全」を最優先するため、人気のあった湖岸散策路を大幅に撤去することにしました。

 この決断をした理由には次の事があります。

■木道を設置する工事の際に、周辺の土壌や植生に大きな変化を与えることで、外来植物が侵入しやすくなり繁茂してしまう危険性がありました。このことは、現に古い木道を設置して以降、オオアワダチソウを初めとした外来植物がウトナイ湖の周辺、特に木道付近に多く確認できることから、木道工事によって本来の植生を大きく変えてしまった証拠となっています。今でも、多くのボランティアの方がこのオオアワダチソウの駆除に汗を流して下さっています。

■湖岸沿いは小鳥たちの餌となる木の実や虫が多く、沢山の小鳥や小動物が利用しています。

 ここに観察路を造ってしまうと、人が通る度に隠れたり、巣を作るのにも人通りが多くて安心できません。私たちには悪気はないのですが、彼らにはその気持ちは伝わりませんから、常に人から見られる場所は安心できる生息地とはならないのです。

赤の点線部分に旧木道があった。

この二つの理由から、人気のあるルートを撤去するという、大きな決断をしました。

もちろん反対の意見をいただくこともありましたが、ウトナイ湖は都市部の公園では無く、鳥獣保護区なのですということを、時間を掛けて説明し、お互いの思いを伝え合い、私たちの気持ちを理解していただく事ができました。

今では、撤去した木道の跡地には、たった1シーズンの夏で木道があったことが分からないほど、植物がわっさわっさ生えています。今年は、この木道跡地を中心に、外来植物の生息範囲の調査も行いました。来年からはどの様な駆除方法が効果的なのかを検討し、実行していく予定です。

ー イベントのお知らせ ー

 さて、ここで宣伝です。

 2月7日(土)、8日(日)にスノーシューイベントを開催します。

 スノーシューで木道撤去後を歩き、冬の木々や生き物の足跡探し、野鳥の観察などを行います。(冬は生き物が少なく、夏ほど影響はありませんので、特別に夏には行けない場所でウトナイ湖を楽しみましょう。)

 その他にも盛り沢山で、2月中はずっとイベントを開催していますので、どしどしお越し下さい。

さーて、次は誰にしようかな~。

よし!! 支笏湖の畠山さーん 

支笏湖の魅力がたっぷり詰まった日記を宜しくね~!!

■イベント詳細

1)冬を楽しむミニツアー

レンジャーやボランティアがセンター周辺の自然を紹介しながら歩きます。
結氷した湖、動物の足跡、活動する小鳥などを観察しましょう。

日時:2月1日(日)、14日(土)、15日(日)、21日(土)、22日(日)、28日(土)
   各日とも14:00~14:30
   2月7日(土)、8日(日) 各日とも14:30~15:00
対象:どなたでも(小学生以下保護者同伴)
申込:不要(当日直接会場へ。開始15分前までに参加受付してください。)

2)冬の湿地をスノーシューで探検しよう!

普段は通れない湖岸沿いをスノーシューで歩きながら、足跡や野鳥などを観察します。
日時:2月7日(土)、8日(日) 各日とも13:00~14:00
対象:小学生以上
定員:各日とも先着10名
申込:1/6から受付開始
持物:あればスノーシュー(貸出可)

3)毛糸で作る水辺の鳥

毛糸を使ってハクチョウやマガンなどの水辺の鳥を作ります(数に限りがあります)。
日時:2月14日(土)、15日(日) 各日とも10:00~12:00、14:00~16:00
申込:直接会場へ(随時受付)

4)湿地クイズラリー

館内に設置した、湿地に関するクイズに挑戦していただき、参加者にはしおりを差し上げます。
日時:2月1日(日)~2月28日(土)の開館時間内
申込:直接会場へ(随時受付)