北海道のアイコン

北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

World Wetlands Day ~February 23, 2015~

2015年02月23日
利尻礼文サロベツ国立公園 山上佳祐

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------「世界湿地の日(World Wetlands Day)」とは、1971年2月2日にイランで締結された「ラムサール条約(国際的に重要な湿地に関する条約)」の記念日です。毎年、2月2日にはラムサール条約で定められた、湿地と湿地資源の保全と賢明な利用(ワイズユース)を推進するための啓発イベントが世界中で実施されています。

その世界湿地の日をAR同士が連携してPRできないかと考え、始まったのがAR日記のリレー企画です。3回目となる今年も、ウトナイ湖、支笏湖、洞爺湖、サロベツ原野、クッチャロ湖などの北海道の代表的な湿地を、リレー形式でご紹介します。

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

世界湿地の日リレー企画、第5弾。ラムサール条約登録湿地のサロベツ原野については過去にも紹介してきましたので、今回はあえてサロベツ原野ではなく、普段は取り上げられる機会が少ない、サロベツ原野と日本海の間に広がる砂丘林を紹介します。

稚内から幌延までの海岸線に沿って、東西に約3km、南北に約30kmにわたって続くこの砂丘林は、ミズナラやトドマツなどの原生林と、大小あわせて約170もの湖沼群で構成され、国内では類を見ない特異な景観を形成していることから、国立公園特別保護地区、また北海道指定天然記念物に指定されています。中でも特徴的なこの湖沼群は、ミコアイサやアカエリカイツブリといった水鳥の国内でも数少ない繁殖地となっているほか、周辺ではジュンサイやオゼコウホネ、エゾカンゾウなどといった植物が生育する重要な湿地となっています。

さてそのような砂丘林ですが、散策路などは整備されていないため、林床に植物が繁茂し、湖沼の水面があちこちに顔を出している夏季には簡単に立ち入ることができません。しかし冬季には、林床は雪に覆われ、湖沼も厚い氷に閉ざされるため、スノーシューを履けば林内へ入りやすくなります。

※ 砂丘林は国有林であるため、一般の方が許可なく入林することはできません。

そこで林野庁から入林の許可をいただき、冬のある晴れた日に砂丘林の巡視に行ってきましたので、その様子をご紹介します。

砂丘林へ足を踏み入れた当初は物音ひとつ聞こえず、足下に湖沼があることがわからなくなるくらい雪に覆われているため、まるで砂丘林全体が深い眠りについているような感覚を覚えました。

しかし、注意深く探してみると、写真のような様々な生き物やその痕跡を観察することができ、冬の砂丘林も生き物たちにとっては、食料を得る場、風雪を凌いで休息する場などとして、夏と同様に生きていくために欠かせない場所なのだということを、改めて感じました。

いつの季節も変わらずに多くの生命を育むこの砂丘林は、人間にとっても、天然の防風林・防雪林などとして役に立ってきました。過去の厳しい風雪や人間活動などにより立木が失われた場所もありますが、そのような場所では自然再生の取り組みも進められています。私もサロベツ地域のアクティブ・レンジャーとして地域の方々と協力しながら、自然再生の取り組みに関わってきました。これからも末永く、この貴重な砂丘林を見守っていきたいと思います。