アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
BLIZZARD / 私を町外に連れてって
2015年03月13日週末の度にやってくる暴風雪、通行止め、そして――孤立。知床国立公園・陸の孤島ウトロの高橋です。
先月2月はじめ、知床半島東側にある羅臼町が数日間にわたる暴風雪で孤立し、全国ニュースで取り上げられました。疲弊した町民の皆さんや、災害派遣された自衛隊員による除雪作業の様子は、記憶に新しいことと思います。この暴風雪では、羅臼町ほどではないにしろウトロにも大雪が降り、例によって道路は通行止め、町が孤立しました。
横殴りの吹雪の中、車を掘り出して帰宅する永瀬レンジャー
(この後、途中で道が無くなったため、車を乗り捨てラッセルして帰ったとのこと)
東北出身の私は、ここ知床ウトロに暮らすまで「北海道は台風も梅雨も無いからいいよなー」などと思っていましたが、浅はかな考えでした。穏やかな夏の代価を取り立てるが如く、冬に壮絶な暴風雪がやってきます。最低3回はきます。慈悲は無い。
実際、2月15~16日、27日、3月2日と立て続けに3度の暴風雪が北海道東部を襲い、ウトロの観測史上最高となる積雪200cmを記録。いずれの暴風雪でも、やはり町が孤立しました。
「町が孤立する」これは結構な危機的状況のはずなんですが......私の周りだけでしょうか、住民の皆さんは意外と普段通りだったりします。先述の通り、ウトロは毎冬すくなくとも3回は暴風雪により孤立するため、幸か不幸か「孤立慣れ」していると言いますか......あまり悲壮感がありません。「週末に斜里町の大きなスーパーへ買い出しにでかけ、一週間分の生活物資を買いこんでくる」というような買い物スタイルのご家庭が多いせいか、普段からの備蓄がなされていることが、心理的余裕に繋がっているのかもしれません。
暴風雪時の道東地域の通行止め状況。実際はウトロだけでなく、大体どこも孤立します。
(画像: 北海道地区道路情報 / 国土交通省北海道開発局 ※2013年2月の暴風雪時のもの)
またウトロは漁業や農業も盛んな町。夏にとった魚や野菜を貯蔵してある、なんてお宅も多く、食べ物の心配がないのも大きいと思います。(ちなみに私の場合は、食生活が近所のコンビニに全面依存しているため、道路閉鎖で流通が止まると死活問題です)
そして何よりも、「数日で必ず除雪が完了して、道路が開く」という事実と、それにもとづく「どんな雪でも2、3日我慢すればいいだけ」という全幅の信頼、楽観こそが、孤立時の一番の心の支えになっている気がします。巨大な除雪車を駆って、日夜道路を除雪してくださっている関係者の方々には、本当に感謝することしきりです。
台風一過の晴天の下、朦朧とたたずむエゾシカと、雪化粧に磨きがかかった羅臼岳
そんな3月10日現在、この記事を書いている今もまた、巨大な二つ玉低気圧が近づいてきています。さて、今回は果たして......。