アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
なごり雪 / オルカ
2015年04月07日連日春らしい暖かい日が続いて雪解けが進み、海沿いはすっかりなごり雪といった風情の知床国立公園・ウトロの高橋です。
お昼休みに事務所の電話が鳴りました。転任前の挨拶回りで外出していた松永レンジャーからでした。
「シャチ(※)おるんやけど!!!」(※学名: Orcinus Orca)
知床半島の周辺の海には、様々な海棲哺乳類がすんでいます。アザラシ、トド、イルカにクジラ、そしてシャチ。こうした動物らを船から観察するウォッチングツアーが盛んにおこなわれています。が、これは主に半島の東側、羅臼の海の話。ウトロの海では夏にイルカが、冬にアザラシが時折見られはするものの、クジラやシャチといった大型の動物にはなかなかお目にかかれません。ましてやシャチは、アイヌ語で「レプンカムイ」=「沖の神」と呼ばれるように、基本的には沿岸ではなく沖合に暮らしているため、今回のように陸上から肉眼で見られる機会は、いよいよ珍しいのです。
シャチがいたという弁財湾
シャチの発見現場・弁財湾へ向かうと、既にちょっとした人だかりができていました。「いたいた!」「あっち!」という声のする方に目をやると
親子でしょうか? 2頭が、連れだって泳いでいく姿が見えます。そこから離れたところにさらにもう1頭。しばらく海面付近を悠々と泳いだのち潜り、姿が見えなくなりました......うーん、実にデカい!シャチの体長はメスで7m前後、オスの大きな個体は10mにも達するといいます。周りが海なので比較対象になるものが少なく、写真で上手くお伝えできないのがなんとも残念です。
「また出た!あっちだーッ!」
先ほど潜った地点からは大分離れて、再び現れました。皆さん続々車に乗り込み、シャチが次に現れるであろう付近へ先回りをする姿に、竜巻を追うストームチェイサーめいた本気を感じます。そろそろ昼休み時間が終わるので我々は撤収しましたが、とことん追いかけた方の話では、浮きつ沈みつしながら陸沿いに南へ、つまり知床半島基部方向へ泳いでいったとのこと。彼らは果たしてどこへ向かったのか......。
ちなみにシャチの目撃地点付近にはアザラシもいましたが、皆さんシャチに夢中で、哀しいかなアザラシへのリアクションは薄かったです。