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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

巡り来る花の季節

2015年05月19日
利尻礼文サロベツ国立公園 高澤 和大

 こんにちは、礼文島担当アクティブレンジャーの高澤です。


 月日は百代の過客にて、行きかふ年もまた旅人なり。いくばくかの急ぎ足で今年もまた礼文島へ本格的な花の季節が訪れました。普段は稚内で勤務している私は気もそぞろ。花々が日に日に輝きを増しているであろう国立公園最北の離島に、想いばかりが駆け巡ります。


エゾノハクサンイチゲ(2015年5月15日、桃岩展望台コース)


 「花の浮島」とも呼ばれる礼文島の最大の魅力はなんといっても高山植物。彼らはかつて地球上に繰り返し訪れた氷河期の、どこかのタイミングで島へたどり着いた旅人の末裔です。同じように日本各地へ旅した彼らの仲間の多くは高山植物というその名の通り、今では標高の高い場所でしか生き残ることができていません。だけどここでは潮の匂いを感じる低地の草原に力強く咲き誇っていて、どこか夢でも見ているような、あるいは氷河期へタイムスリップしてしまったかのような錯覚を覚えます。


エゾノハクサンイチゲと利尻富士(2015年5月15日、桃岩 展望台コース)


 最後の氷河期が終わってからおよそ1万年。地球46億年の歴史から見ればほんの一瞬ですが、人の一生にしてみれば気が遠くなるほどの歳月に、この地で連綿と命を繋いできた小さな植物たち。彼らがこれからも氷河期の息吹を伝え続けることができるよう、見守っていかなければなりません。


レブンコザクラ(2015年5月15日、桃岩展望台コース)


 花々が咲き始めるのに合わせ、礼文アクティブレンジャーは巡視や調査のために島へ長期滞在する期間に入ります。次回の更新は礼文島からお届けします。