アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
夏の盛り、まだまだ涼しさ残る羅臼岳でヒグマに遭遇!
2015年08月13日みなさん、こんにちは!
羅臼自然保護官事務所 アクティブレンジャーの宮奈です。
登山シーズン真っ盛りの8月。百名山羅臼岳にも多くの登山者が訪れています。
しかし、ウトロ側の利用者数に比べ、利用者が少ない羅臼側では、登山シーズンとは思えないような静けさが漂っています。
そんな中で巡視をしていると、知床の自然を一人占めしているような気持になります。(巡視は2人以上で実施しています。)
自然に包まれる羅臼側登山道(奥に見えるのが屏風岩)
8月も半ばを迎え、本州では暑さに耐え忍びながら登山をされている方が多い時期と思われますが、羅臼岳ではまだまだ大きな雪渓が行く手を阻んできます。霧がかかると道標のロープ(羅臼山岳会、林野庁、環境省の3者で毎年設置している。)がなければ先行きが全く分からなくなってしまうため注意が必要ですし、雪渓は長く続くためかなりの体力を消耗します。
屏風岩奥に見られる雪渓
そんな難易度の高い雪渓ですが、雪渓を吹き降りてくる風は、暑さで汗が噴き出している体になんとも言えない心地よさを運んできます。夏山のオアシスと言えるでしょう。このオアシスによく下の写真のようなものを見かけます。
そう、ヒグマの糞と足跡です。
ヒグマは汗腺(汗が出るところ)が少なく、体温が38度ほどと高いため、暑さが苦手です。そんなヒグマにとって雪渓はまさに夏のオアシス。出会った登山者さんからのお話では、ヒグマが雪渓の上にのんびりと座り込んでいたこともあったそうです。
このことから雪渓は夏の時期、ヒグマに出会いやすい場所と言えるかもしれません。
実際、8月中旬に行った羅臼岳巡視では、屏風岩前の雪渓の近くでヒグマに遭遇しました。雪渓の左上に見える黒い点がヒグマです。
写真だと伝わりにくいのですが、はっきりとヒグマの動きが読み取れる近さでした。拡大してみると人の背丈を越える岩に匹敵するほどの大きさであることが分かります。
今回、ヒグマがあまりこちらを気にしていなかったために、通り過ぎることができました。非常に緊張した瞬間でした。ヒグマに遭遇した場合、まず慌てないことです。走り出したりしてしまうと、ヒグマを無暗に刺激して危険な状況に陥ります。遭遇すると30分、長い時では1時間以上その場で待たなければいけないこともあります。登山計画はゆとりのあるものを作成し、慌てずに対処できる心のゆとりを確保しましょう。もちろん、ヒグマに出会わないことが1番ですから、登山中は声を出したりすることで、自分の位置をヒグマに伝え、突然の接触を避けるなど、ヒグマ対応を心得た上で、登山に臨んでください。
知床は生き生きとした自然に触れ合うことのできるかけがえのない場所です。だからこそ、危険が隣合わせであることを忘れずに、笑顔で楽しんでいただけるよう、ヒグマをはじめとする知床の自然との付き合い方を知っていただけたらと思います。
ヒグマ対策情報
知床半島先端部地区でのヒグマ対策-環境省
https://www.env.go.jp/park/shiretoko/guide/sirecoco/bear02/
ヒグマ対処法 公益財団法人 知床財団-知床自然センター