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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

タンチョウ総数調査

2016年01月29日
上士幌 上村 哲也

 上士幌自然保護官事務所の業務に登山道巡視やスノーモビル乗り入れ監視など大雪山国立公園の管理のほか、十勝管内における希少野生生物の保全があります。

 今回は、幕別町と大樹町でタンチョウの総数調査をお手伝いしました。この調査は、タンチョウの越冬数、幼鳥数、幼鳥を連れた家族数、標識個体の生存状況を調べ、保全活動の重要な基本情報になるものです。

 真っ白と真っ黒の体、真っ赤な頭、端正な姿と優美な舞から鶴といえばタンチョウといわれ、折り紙や「鶴の恩返し」で親しまれ、学名「Grus japonensis」には「日本産の」という単語が入る日本を代表する鳥です。

 環境省ウェブサイト...タンチョウ

 https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/tancho.html

 日本では絶滅したと考えられていたタンチョウは、再発見された後、様々な方々の努力で保護が進められ、2014年、タンチョウ保護研究グループの調査では約1,500羽が確認されています。

 趣味で冬の山にも登ったり、クロスカントリースキーで汗をかいたりしますが、行動中や運動中は体から熱が生産されて薄手の衣類を重ねるだけでそう寒くはありません。ところが、タンチョウの観察、調査という業務は、任された観察位置で一日中じっと動かないことも珍しくありません。もこもこのダウンジャケット、耳まで覆う毛糸の帽子、グローブのような手袋、厚手の靴下と防寒長靴、これでもかと重ね着をします。

 午前中は、幕別町内の河川をねぐらと餌場にする個体の調査が行われました。川岸には樹木が並び川面まで段差があって曲がって流れる川は見通しがききません。二人ほどが川岸に入り追い立てます。周辺の道路にも観察者を配置し飛んで出たり歩み出たりするタンチョウを無線で連絡を取り合いながら確認します。二人で組んで任された場所には現れませんでしたが、隣で4羽の家族が観察されました。こちらからも双眼鏡でならそれとわかります。併せて20数羽が周辺で確認されました。

飛翔の気配を見せるタンチョウ 午後からは、大樹町に場所を移し、牧場地帯に散らばっている個体を調査します。乳牛を育てる牧場には飼料作物を発酵させる設備があり、牧草のほかトウモロコシなどの穀類が用いられていて、これらをついばみにタンチョウが集まってきます。設備はコンクリートの壁で仕切られた升状の形をしていて、よく確認しないとタンチョウが隠れてしまう高さです。これまで積み重ねてきた情報も活かし、あちらの牧場、こちらの川縁と車で移動しながら確認していきます。飛来する個体を見つけると何処か近くの確認済みの場所から飛んできたものか、もっと遠くから来たものか、確認に回ります。同じ個体を何度も数えてしまわないように確認を繰り返すのです。

 やがて、夕暮れが迫るとタンチョウたちはねぐらへ帰ります。頭と体を前へと伸ばして飛び立つ気配を見せ、大きく翼を拡げふわりと飛び立っていきます。