アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
ワレカラの姿は見えぬ
2016年02月01日
知床国立公園
ワレカラというのは、軟甲綱端脚目に分類される生物で、海中の藻の中に生息しており、世界中に様々な種類がいます。
名前の由来は、食用の藻を乾燥させると表面にワレカラの死骸が残ることがあり、それが割れた殻に見えたので、ワレカラと呼ばれるようになりました。
また、古くから和歌の題材とされ「我から」という言葉にかけて秋の季語として詠まれていたそうです。
ワレカラの 姿は見えぬ 冬の海
と一句詠んでみましたが、海中の藻の中にいるわけですからどんな季節だろうとその姿を地上から見ることはできません。
ただ先日海中から引き上げられたロープを見る機会があり、そこにはおびただしい量のワレカラがくっついていました。
(ロープの中でうごめく無数のワレカラ。海藻と同系色)
おそらくはこの無数の命が支えとなり海洋の生態系が保たれているのでしょう。
こうした微生物から魚類へ、魚類からそれらを餌とする海洋性哺乳類や海鳥に命のリレーはつながれていきます。豊かな漁場であり、また希少なワシ類や鯨類が訪れる羅臼の海においてもそれは変わることはありません。
(ワレカラをつつくカモメ)
(鷲も海産物をよく食べます)
ここで締めの一句
我知らず うみを育む われたから