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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

これからどうなる?野付の花々

2016年07月19日
羅臼 宮奈光一郎

 7月を迎え、いよいよ夏本番。知床の山々でも花が美しく咲き乱れております。今回は、道東でも一二を争うほどのお花畑、野付半島の状況をご紹介します。

 野付半島は長さ28km、日本最大の砂嘴であり、ラムサール条約湿地の一つです。コクガンやオオハクチョウ、沢山のカモ類などが見られる場所として有名ですが、エゾカンゾウやセンダイハギ、ハマナスが咲き乱れるお花畑としても名高い場所です。

 例えば、エゾカンゾウ。およそ6月の中旬頃から7月前半にかけて、エゾカンゾウが砂丘一面を覆いつくし、黄色い絨毯が敷かれた様な景色を作り出してくれます。

黄色い絨毯の様に一面に広がるエゾカンゾウの群落とエゾカンゾウ個体(2016年6月撮影)左)エゾカンゾウの群落 右)エゾカンゾウ

毎年私たちを楽しませてくれる花々ですが、近付いてよく見てみると・・・


花茎が食べられているエゾカンゾウ(2016年6月撮影) ぽっきりと花をつけていた茎(花茎)の先が無くなっているものがありました。こんなことをするのは誰でしょう。それは北海道ではお馴染みの生きもの、そう、エゾシカです!

 エゾカンゾウは昔からエゾシカに食べられていたと思われますが、近年、急激にエゾシカが増えたことにより、影響が懸念されるようになりました。羅臼羅自然保護官事務所では、その影響を見るために、毎年被食状況(食べられているエゾカンゾウの状況)を調べています。調査地点を幾つか定めて実施しているのですが、場所によって花が咲く前にほとんどが食べられてしまっていたり、そもそも花茎がほとんど確認されなかったという状況が確認されています。

通常通りエゾカンゾウガ咲き乱れている調査地点(2016年6月、7月撮影)                       調査地点

  1. 左)2016年6月撮影 右)2016年7月撮影

通常だと、このようにエゾカンゾウガ咲き乱れるのですが・・・

シカの影響を受けてエゾカンゾウの花茎ほとんどが被食されていた調査地点(2016年6月、7月撮影)                       調査地点
               左)2016年6月撮影 右)2016年7月撮影

場所によってはほとんど花が確認されませんでした。
※どちらもエゾカンゾウの群落に調査地点を設置しています。

 まだ、野付半島では目に見えて大きな影響が出ていない状況かもしれません。しかし、なんらかの手立てをしないと、今後、貴重な植生がなくなるかもしれません。また、植物が影響を大きく受けると、それを食べていた昆虫などの他の生きもの、ノサップマルハナバチ等の希少野生生物が姿を消すことにつながることも考えられます。

 人にとっても、野生生物にとっても憩いの場であるお花畑を、今後も注意して観察していきたいと思います。