アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
秋深し、燃ゆるトムラウシ山
2016年10月13日8月、立て続けに接近、通過した台風による大雨でトムラウシ山登山口へ通じる道道の通行止めが続き、もう今年は雪が降ってしまうのではないかと心配していました。9月27日に通行止めが解除され、9月30日から10月1日に温泉コース登山口からトムラウシ山を目指しました。ヒサゴ沼避難小屋のトイレが倒壊の危機という情報があり、これを確かめるべく、ヒサゴ沼泊1泊2日の巡視です。
トムラウシ山といえば短縮コースが人気ですが、このときは登山口に通じる林道が土砂崩れのため通行止めでした。(10月12日に解除されました。)温泉コースは、深い森の中を進みます。初めに急登があり体が温まるまではここをゆっくり登らないと後で足のけいれんなどを引き起こし注意が必要です。急登が緩む頃、東にニペソツ山を望みますが、樹木の間からの眺めなのでなかなか絵にはなりません。
登山口へ通じる道路は修復箇所を見ると川に近い部分がそっくり削り取られたようでしたが、登山道には目立った損壊はありません。尾根筋に付けられた道は水の流れから離れ、流れ込む水も道を壊すほど多くはないのでしょう。
前トム平を過ぎトムラウシ公園が見渡せる高みまでくると、この日、楽しみにしていたトムラウシ山腹の紅葉が広がっていました。紅く染まったナナカマドに暖かな日射しが注がれ、影に縁取られて斜面に浮き上がります。
ヒサゴ沼は三方を山に囲まれ穏やかな野営指定地ですが、東または西からの風はときに強く吹き抜けるようで、避難小屋とは別棟に建てられたトイレは、西寄りの柱が土台から外れ落ち、台形状に歪んだため出入口のドアが充分に開け閉めできない状態でした。外れ落ちた柱の基部は腐朽が進んでいて、元の位置に戻すだけでは直りそうもありません。積雪期を間近にして必要な修理ができないため、来春にどのような姿をしているのか不安で一杯です。
野営地もまた問題を抱えていました。今回の大雨だけではなく、長い年月の間に地面の土が洗い流され、低くなった野営地に水たまりができるようになりました。ひとたび雨が降れば水たまりが消え土が乾くまでテントを張る場所がなくなり避難小屋が混雑するようです。野営地の排水だけでなく水が流れ込むことを防ぐ対策が必要そうです。
辛い思いをしたのは南沼野営指定地周辺のトイレ事情を目の当たりにしたことでした。3回の巡視で50以上のティッシュなどトイレ痕を確認しました。お花畑の陰にそれらの痕はあり行き来するためのトイレ道がはっきりと刻まれています。トイレ痕のほとんどは野営地より高い場所に見つかっていますから、野営地の水場が汚染されていることは疑いようもありません。
お花畑を踏み荒らさず、水やその他の自然を汚さない配慮をしてください。トムラウシ山の南沼野営指定地には携帯トイレ用のブースが設置されています。携帯トイレを持参して、使用した紙も汚物も必ず持ち帰ってください。南沼だけでなく、大雪山の多くの場所で同様のことが求められています。