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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

知床にもいた!奇妙な生きものにご対面!

2016年12月01日
羅臼 宮奈光一郎

 今年も最後の月を迎えました!

 早いものですね。

 今回は今年1年知床で出会った生きものの中でも、一際奇妙な生きものをご紹介させていただきます。

葉の裏に隠れているオカモノアライガイ(2016年6月撮影)

 こちらの写真の生きものをご存知でしょうか。オカモノアライガイと呼ばれる水辺周辺に生息する陸生の巻貝です。知床・羅臼でも水辺周辺の植物を観察していると、よく見かける生きものですが、皆さん、この生きものに寄生する奇妙な生きものを見たことがあるでしょうか。

        それがこちら↓(ちょっと閲覧注意)!

陽のあたる葉の上にいるLeucochloridium.spに寄生されたオカモノアライガイ(2016年9月撮影)

 ロイコクロリディウム(Leucochloridium:属)と呼ばれる寄生虫です。

 どこにいるの?と思われたかもしれません。よくよく触覚を見てください。

 奇妙なしましま模様になっていませんか?

        拡大すると...

Leucochloridium.spに寄生されたオカモノアライガイの拡大写真(2016年9月撮影)

 写真奥が正常な触覚です。写真手前の触覚にはあきらかに他の生きものが入り込んでいます。これがロイコクロリディウム(属)です。

Leucochloridium.spがオカモノアライガイの体内に複数確認された(2016年9月撮影)

 ロイコクロリディウム(属)は終宿主(寄生虫が成体になったときに寄生している生きもの)を鳥とする寄生虫です。鳥の体内で卵を産み、卵は糞に混ざって外に出ます。卵入りの糞を食べたオカモノアライガイが寄生されてしまうというわけです。オカモノアライガイはロイコクロリディウム(属)にとって中間宿主、終宿主である鳥にたどり着くための中継地点となります。

 さて、どうやってロイコクロリディウム(属)はオカモノアライガイから鳥にたどり着くのでしょうか。結論から言えば、オカモノアライガイごと鳥に食べてもらうことで、たどり着きます。オカモノアライガイに食べられたロイコクロリディウム(属)は、体内で成長すると1、2枚目の様に触手に移動し、上下(?)に脈動することで触手をイモムシに似せ、鳥に餌だと思わせます。ただし、オカモノアライガイは日光を好まないので、そのままだと暗い場所に移動してしまい、鳥に見つけてもらえません。そこで、脳に影響を与え、明るいところにオカモノアライガイを移動させます。

 こうして、オカモノアライガイごと鳥に食べられ、体内に入ったロイコクロリディウム(属)は成長して新たな卵を産む、というなんとも奇妙な一生を送るわけです。

 知床を訪れると、ヒグマやオオワシといった大型の生きものに目が行きがちですが、小さな生きものの世界にも魅力が沢山あります。知床に訪れた際には是非、様々な目線で自然を観察していただけたらと思います。