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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

水上スペシャル!謎の洞穴にケイマフリの巣箱を設置せよ!

2017年09月07日
ウトロ 高橋 優太

タコ漁用の箱を再利用してつくった海鳥の巣箱

これが何かおわかりでしょうか。タコ漁用の箱?うーんおしい、タコ漁用の箱を再利用してつくった海鳥の巣箱でしたー!初見は灯油のポリタンクかと思った知床国立公園ウトロの高橋です。

先日、「知床ウトロ海域環境保全協議会」の活動の一環で、この海鳥用巣箱を設置しにいきました。知床ウトロで海鳥と言えば・・・・・・そうです「ケイマフリ」です!

ケイマフリ

ケイマフリ

ケイマフリとは、知床半島ではウトロ近海でのみ見られる希少な海鳥(絶滅危惧I類)です。その数わずか100~140羽ほど。繁殖期である夏5月~8月の間だけ姿を現し、海に面した断崖で営巣します。子育てが終わると沖へ飛び去り、翌年の夏まで姿を現すことはありません。その生態はいまだ多くの謎に包まれています。

今回設置した巣箱にケイマフリが営巣すればしめたもの、内部に調査の機材をとりつけモニタリングすることで、生態を解明する大きな手がかりが得られるのです!

しかし海鳥が営巣するような断崖にどうやって巣箱を設置したのか......ここからは現場の臨場感をお伝えするため、文体を変えてお届けしたいと思います。

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知の果ての海、絶海の洞穴に希少海鳥ケイマフリ、安寧の地は実在した!!

かくして我々はケイマフリの巣箱とともに、知床海鳥研究会会長・福田佳弘氏が駆る小型船「蒼鷹丸」に乗り込み、オホーツク海へと出航した!

小型船「蒼鷹丸」に乗り込み、オホーツク海へと出航

ウトロ港から船を走らせることおよそ1時間。目的地の断崖に到着した。船はゆっくりと岩壁に近づいてゆく......その時である!我々をいざなうかのように、謎の洞穴が姿を現した!!!

謎の洞穴が姿を現した

「隊長、どうやって中に入りましょうか」

洞穴は海抜1.5mほどのところにあり、もちろん乗り移るための桟橋やロープなどは存在しない。

「しかたがない、船首から飛び移るぞ!」

みな息をのむ。もし海に落ちればただでは済まない......オホーツク海は夏でも水温が18℃前後ととても冷たいのだ!オホーツク海沿岸約280kmに海水浴場が4件くらいしかないのも納得の冷たさである。最悪の場合、冷水のショックで心臓が停止し、即死する......隊員達の顔に不安の色が浮かぶ。しかしそんなに高くないため飛び移ることができた。

洞穴内部を見回すと、思いのほか空間が広がっている

上陸し洞穴内部を見回すと、思いのほか空間が広がっている。8畳+クローゼット+ロフトぐらいの広さである。さらに左手上部には、人一人が入れる大きさの横穴が5mほど続いており、その先は小さな岩の小窓となって外の光が差し込んでいた。

人一人が入れる大きさの横穴

「高波が避けられ、外敵が来ず、冬の流氷すらも防いでくれる、ケイマフリ安寧の地......ここだ、ここしか考えられない!巣箱を設置しよう!!」

設置位置検討 巣箱の固定巣箱の固定 完成

のべ3日間に及んだ設置作業を終え、我々は洞穴を後にした。

さらば洞穴

9月に入ればウトロの海は荒れ始める。そうなればもはや、人類がこの洞穴に足を踏み入れるのは不可能になるだろう。訪れることができるのは唯一、海鳥達だけである。

「......本当にこれで、よかったのでしょうか。」 (※ 巣箱の設置場所・固定方法等)

「何が正しいかなんて誰にもわからないさ。答えはきっと───ケイマフリだけが知っている。」

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というわけで今回とりつけた巣箱、はたしてケイマフリは営巣してくれるのでしょうか。来夏の繁殖期にむけ、周囲にデコイを設置する等して、より営巣したくてたまらない環境を整えていく予定です。随時レポートしていきますので乞う、ご期待!