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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

トムラウシ南沼汚名返上プロジェクト

2018年04月12日
上士幌 上村 哲也

「初夏の五色ヶ原」

初夏の五色ヶ原 初夏、まだ残雪が多く残る頃、パークボランティアのみなさんと沼ノ原クチャンベツ登山口から入山し、ヒサゴ沼野営指定地に泊まってトムラウシ山まで登山道整備に赴いたときの風景です。五色岳山頂を間近にして、来た道を振り返ると、大沼を抱えた沼ノ原越しにニペソツ山を望むことができます。

 五色ヶ原は、雪の消えるそばから高山植物が咲き乱れ、季節が移ろえば次々と花が代わり、紅葉期にも華やかに色づいて訪れる人の目を楽しませてくれます。

 残念ながら、現在、沼ノ原クチャンベツ登山口へ通じる層雲峡本流林道は、平成28年に台風などの被害を受け通行止めが続いています。

「トムラウシ南沼汚名返上プロジェクト...トムラウシ山では携帯トイレを使いましょう。...」

 上士幌自然保護官事務所は、「トムラウシ南沼汚名返上プロジェクト」に取り組んでいます。し尿ゴミの調査と回収

 トムラウシ山頂直下にある南沼野営指定地の周辺では、草陰や岩陰にし尿ゴミが散見され、野営地から物陰まで経路の高山植物が踏みつけられています。現状に衝撃を受け、自然保護官と十勝総合振興局の呼びかけに応えて多くの協力が集まり、平成29年4月にこのプロジェクトが立ち上がりました。新得山岳会、十勝山岳連盟、山のトイレを考える会、十勝西部森林管理署東大雪支署、新得町、上川総合振興局、十勝総合振興局(事務局)とともに、南沼野営指定地周辺において、携帯トイレの利用を促進することでし尿ゴミを無くし、踏み分けられたトイレ道の植生を復元することを目指しています。

 夏山シーズン、トムラウシ山には、麓の短縮登山口やトムラウシ温泉登山口から3,000人を超える登山者が登ります。表大雪や十勝岳連峰から縦走する登山者も多くいます。平成29年7月下旬から9月末までの限られた期間ですが、自動カメラを設置して設営されたテント数を調査したところ71日間に324張りを数えました。野営指定地で7回行ったアンケート調査に基づくテントひと張りあたりの平均宿泊人数から試算してみると調査期間中に約700人余りが宿泊したと考えられます。ただし、この調査は夏山シーズンを全ては網羅しておらず、悪天候による19日の欠測日を含んでいますから、実際にはこれ以上の人数になります。携帯トイレの普及啓発

 南沼にはトイレがありません。携帯トイレを利用するためのブースが1基だけ置かれています。し尿ゴミが無くならないのはブースが足りないからなのか、携帯トイレそのものが知られていないのか。プロジェクトでは、アンケート調査、利用者数調査を行い、携帯トイレの増設が必要か、その設置は、維持管理はどのように実現していくか、検討を積み重ねています。平成29年のアンケート調査では、84%の登山者が携帯トイレを装備していました。新聞などに大きく取り上げられ高い数字となりました。今後も普及啓発に力を注いでいきます。

トイレ道の植生復元 踏み分けられたトイレ道では、土壌や種子が流れ出るのを食い止め植生を復元しようと、周囲の植生に影響がないヤシ繊維のネットを敷きしました。多くの参加者が協力して資材を運び上げ作業しました。今後も経過を観察し、修繕や改良を施し、施工箇所を増やしていきます。

 登山者の皆様には、どうぞ高山植物の植生域に踏み込まず、汚物や使用済みの紙はお持ち帰りいただきますよう協力をお願いいたします。