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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

南沼汚名返上プロジェクトの傍らで、せめてものお願い事

2018年08月14日
上士幌 上村 哲也

 南沼汚名返上プロジェクトでは、南沼野営指定地周辺のし尿ごみゼロを目指しています。さらに大雪山国立公園全体として携帯トイレの普及に取り組んでいます。

 しかし、今日はそれは一旦横に置いといて、携帯トイレで自身の排泄物をザックに入れ、あるいは外にぶら下げようとも、持ち帰ることがどうしてもどうしても受け入れられない方たちへのせめてものお願い事です。

 ウンコをするときは穴を掘り、後で掘った土を被せ埋めてください。本州では標高2,500m以下、深さ10センチと紹介されているでしょうか。北海道は緯度が高く気候が冷涼なので森林限界が違います。標高1,500m以下を目安にしてください。バクテリアが活発であると1か月ほどでウンコは分解され臭いがなくなり見かけも土と変わらなくなるそうです。地表に残したままだと雨に溶けて川に流れ入る恐れがあります。片手で扱えるシャベル、あるいはスコップを装備に加えてください。

 また、ティッシュペーパーの多くには僅かにプラスチックが含まれていて、強い雨に晒されても容易に溶け消えることがありません。使用済みの紙は持ち帰りましょう。持ち帰りには、冷凍向けの密閉袋などが厚手で臭い漏れを防ぎ便利です。

 登山道はもはや人間社会の領域です。悪臭を漂わせ景観を損ねて他の利用者に迷惑を及ぼさないよう、安全を確保しつつも登山道から距離を置いて位置を定めましょう。下流の方に迷惑とならないよう川や水場の近くは避けましょう。岩場はバクテリアの活動が活発でなく適切ではありません。

 植生に踏み込む場合はそれが稀少な植物でないか、そうでなくても踏み込みによって枯死することがないか観察しましょう。登山道に被れば煩わしい笹も、その根は登山道の侵食を防いでくれています。

 携帯トイレを使うのであれば、同じパーティのメンバーに一時通行止めにしてもらうとかポンチョや傘で隠すとか登山道でいたすこともできるでしょう。

「人間も生物の一員として野糞をすることは自然の摂理だ。」と仰る方がいました。

 しかし、南沼野営指定地がし尿で汚されているとされ、我々が調査を始めてから周辺で見つかるし尿のほとんどは人間のものです。熊のそれは見たことがなく、わずかに鹿やナキウサギ、狐やオコジョらしいものが見られるくらいで、高山植物が動物の排泄物を栄養分としてほとんど利用していないことは明らかです。利用しているのは蝿やコガネムシなどでしょうか。

「人間の大便はそのまま放っても自然界にインパクトを及ぼさない」と考える方は、例えば熊や狐のように蜂や蟻、コガネムシ、コケモモの実や葉や根などを食して排泄してください。その頻度も野生動物に倣いましょう。より、自然界の法則に近い状態を再現できます。

 ところで、ヨガの達人は心臓の鼓動さえ止めることができるそうです。極めれば3日間くらい便意を抑えることができるかもしれません。あるいは1錠で24時間、2錠で48時間、便意を抑える薬はないものでしょうか。

 携帯トイレを使い持ち帰っていただきたいのがいちばんですが、せめて土に埋め、紙だけは持ち帰りいただきたいというお願いでした。

 写真は本文と関係ありません。トムラウシ山への登山道、コマドリ沢の上の岩場で納めた一枚です。可愛いアイツが登山道にまで顔を出してくれています。