アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
秋のウトナイ湖で、シマフクロウを学ぼう 完
2018年11月22日皆さん、こんにちは。
今日は11月11日に開催したセミナーについてご報告します。
なんと、当日は59名もの方々にご参加いただきました!!
正直、驚いています。こんなに大勢の方が一度にレクチャールームに入れたことに。(笑)
冒頭は当所の太田課長補佐が「シマフクロウ保護増殖事業の歩み」と題して、1990年には100羽以下まで生息数が減ったシマフクロウを、研究者の方々や行政が絶滅を危惧し開始した、保護活動の歴史についてお話しました。続いて、シマフクロウ環境研究会代表の竹中氏に、シマフクロウの棲む森で今何が起きているのかについて、データに基づいた科学的なお話をしていただきました。
アンケート結果をみていただくと当日の様子がよく分かるので、いくつかご紹介します。
【アンケート結果より】
○保全事業には、環境省や専門家が頑張るだけではなく、様々な機関との連携が必要
なことが分かった。
○私の住む地域でも近い将来見ることができるだろう、というのが印象に残りまし
た。
○ 繁殖には餌が重要で、その餌を守るために河川や森林の環境整備をしなくて
はいけないということが、とてもストンと理解できました。
○ シマフクロウの住む10km圏内に豊かな自然が広がり他の動物も暮らしやすい
こと、最終目的は生息環境の保全で、ただ数を増やせば良いという簡単な問題ではな
いことが分かった。
○ このようなセミナーを聴かせていただくのは初めてで、何もかもがとても新鮮で
した。剥製に触って、より分かりやすかった。
他にも紹介しきれないほど、沢山のコメントをいただきました。
皆さんの真剣な眼差しや、剥製を触ったときの驚きの表情、次から次に飛び出す質問の嵐に皆さんの関心の高さが伺えました。剥製も大好評で、休憩時間やセミナー終了後にも部分標本の羽を手に取ったり、ツーショットで記念撮影をしたりされていました。写真で見るよりも大きな体と、寒い地域に適応した形態などシマフクロウの特徴を知っていただくことが出来たようです。剥製となっている子は、残念ながら事故で死亡した個体を活用しています。イベント後はヘアスタイルがボサボサになってしまうのですが、毛繕いをして指にクリームを塗り、美容にはしっかりと気を遣っていますよ。(笑)
↑シマフクロウの羽標本と一緒に
大人が持っても片羽だけでこの大きさです。
←シマフクロウの剥製
このシマシマ模様が名前の由来。ではなく、北海道=島
島に住んでいるフクロウでシマフクロウです。
シマフクロウは絶滅が危ぶまれる種の中でも、その数を順調に増やし、保全活動への協力者も多く居る、希望の光と言える種だと思います。
アイヌの方には「コタンコロカムイ:村の守り神」とされているシマフクロウですが、皆さんの街を守りに来てくれるには、もう少し時間が掛かりそうです。
これから数が増えるにつれて、交通事故などの人間活動に由来する事故、ごく一部のカメラマンによる行き過ぎた撮影行為など、まだまだ心配の種は尽きません。
皆さんが直接、河川や森の環境改善に手を加えることは難しいですが、シマフクロウと正しく付き合っていくことは誰にでもできます。
例えば、皆さんがシマフクロウの写真を目にしたとき、一瞬だけ疑問を持っていただけないでしょうか。
例えば、ヒナの写真はどのようにして撮影されたのか。巣の真下から、あるいは巣穴まで登り、威嚇するヒナを撮影したのではないだろうか。その行為を、餌をくわえた親鳥が警戒し、近づけずに遠くから見ていたのではないだろうか。
環境省では理由が無い限り、個人の方にはシマフクロウの写真を提供していません。
もし、あなたが行政や研究者以外の方が撮影したシマフクロウの写真を目にしたとき、その写真は必ずしもシマフクロウの生態に配慮した写真ではないかもしれません。
皆さんの正しい理解が、これからどんどん人目に付くであろうシマフクロウが、安心して子育てすることのできる環境を守ることに繋がります。
そして、シマフクロウの保護活動には環境省だけではなく、森を守る林野庁、川を守る開発局、その地域を一番理解している住民の方々の協力が不可欠です。垣根のない保全の環が一つに繋がったとき、この札幌の街にもシマフクロウの声が届くかもしれません。
いつか、窓のむこうから「ぼーぼー、う゛ー」って聞こえる日が来るのかな~。