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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

ニペソツ山幌加温泉コースの復活

2018年11月30日
上士幌 上村 哲也

 ニペソツ山は標高2,013m、東大雪いちばんの鋭鋒です。深田久弥氏が「日本百名山」の執筆までに登高できなかったことからそこには選ばれていませんが、その後の著作で「申し訳なかった」と言わしめるほど、山容、展望、景観のよい立派な山です。けれども、選ばれなかったおかげで大勢の登山者が押し寄せることなく、じっとナキウサギとの出逢いを待つことのできる静かな山です。5分、身じろぎせず待っていればニペソツ山のナキウサギは愛らしく姿を現してくれます。5分の内に次々と登山者が続くことはニペソツ山では滅多にありません。

前天狗から望むニペソツ山の頂 2016年の夏、連続して接近した台風などの大雨によって、十六ノ沢登山口に通じる林道が崩壊してしまいました。その被害は大きく復旧の目途は立っていません。もう、ニペソツ山には登れないでしょうか。ひがし大雪自然館やひがし大雪自然ガイドセンターなどに多くの問合せが寄せられていました。

 ニペソツ山にはもう一つ登山コースがあります。幌加温泉コースです。十六ノ沢コースの8時間に対して10時間余り(*1)と登山時間が長いことが敬遠されて利用されず、10年近く整備されることなく笹やハイマツが被っていました。この幌加温泉コースが地元関係者の努力により復活することになりました。入口となる2kmの作業道が整備され、登行を妨げていた笹やハイマツが刈り払われ、簡易トイレや携帯トイレ回収ボックスが設置され、道標が整備されました。

 上士幌自然保護官事務所は、赤外線を検知して登山者の通過日時と人数を記録する登山者カウンターを登山口に設置しました。西暦標高年2013年の十六ノ沢コース、2,648人(*2)には遠く及びませんが、2018年夏山シーズンに千人余りの登山者が訪れました。幌加温泉コースは行程が長く標高差も1,300m余りと大きく日帰りで往復するには健脚が求められます。自身の体力をしっかり見極め、例えば下山が日没前になるように綿密な計画が必要です。9月下旬ともなれば日の出から日没までは12時間ほど、登山口から中腹辺りまで森の中を歩く東大雪の山では、日が落ちれば途端に暗くなってしまいます。足下が暗くなれば転倒の危険があります。ありがたくない野生動物との遭遇も起こりえます。

登山道の途中、三条沼 ニペソツ山を訪れる登山者はそこのところをよく心得ていて、それが登山者カウンターのデータにも表れていました。次の図は、日別の入下山時間帯分布です。バブルの大きさが通過した登山者の人数を表しています。早朝の下山や遅い入山、日出没の線から大きく外れているのは恐らくはシカなど野生動物を検知したものでしょう。登山者が、日のある内に行動時間を納めようとしていることがうかがえます。

ニペソツ山幌加温泉コースの日別時間帯分布

*1 北海道新聞社刊 夏山ガイド第3巻による。

*2 上士幌町観光協会設置の登山者名簿による。