アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
大雪山の動物たち
2019年08月21日大雪山の魅力は、山だけでなく、山で暮らす野生動物たちの存在もかかせません。
今年の夏は、いつもの年よりも多くの野生動物に出会いました。
特に、子育て真っ盛りの7月は山に行くたびに動物の親子に出会うことができ、手に汗握って応援したり、癒やされたり、今日も何かの親子に出会えるかな?と、ワクワクしながら登山口へ向かっていました。
そんな7月に出会った野生動物の親子を紹介します。
【姿見の池の近く エゾシマリスの親子】
登山道を歩いていると、はじめに母シマリスが目の前の岩の上に現れました。ジッとしていると、そのうち子供2匹も登場。
見晴らしがいい登山道では、外敵のカラスやキタキツネに見つかる危険があります。母リスは、外敵がいないのを確認し、「こっちだよ!」と子供を誘導。岩から岩へちょこまかと、少しずつ、少しずつ進んで、ササの中に消えていきました。
人間にとっては一歩の距離も、シマリスにとっては緊張の大移動になるのでしょう。3匹とも元気かな?
【原始ヶ原林間コース エゾライチョウの親子】
樹林帯の登山道を歩いていると、まず大きな母ライチョウがバサバサと羽音を立て目の前を横切りました。ここでもジッとしていると、続いてまだフワフワの毛の幼鳥2羽が枝から枝に危なっかしく飛び移っているのが見えます。静かに見守っていると、ガサガサと音が聞こえ、数m先の登山道をダーッと全速力で走っていく最後の1羽。3羽も幼鳥がいました!
最後の1羽は飛び立ちたくても、私達がいることで、飛び立てず慌てて走って行ったように見えました。驚かせてごめんね。
キリリとした母ライチョウと、まだ頼りなげでボサっとした感じの幼鳥3羽は、秋までは"家族群れ"で樹上で暮らし、秋以降は独り立ちするようです。
【つりがね山にエゾヒグマの親子】
美瑛富士登山口から入山し、双子池で一泊。トムラウシ山へ行くため、十勝岳連峰の核心部でもあり、大雪山最奥地とも言えるコスマヌプリからつりがね山へ向かっている途中、ガス(濃霧)が切れた100mほど先の雪渓にいる母グマと2頭の子グマが見えました。
観察していると、2頭の子グマはダッシュして急登を駆け上がり、下の雪渓に一気にスライディング!ズルズルと滑り落ち、子グマがはしゃいでいるのが見て取れます。無邪気に遊ぶ子グマを近くで見守る母グマ。ここはめったに人が通らないので、ヒグマの親子も警戒心を解き、自然体で過ごしているのでしょう。
それにしても、山にいるヒグマはなんと品格があるのでしょう。私も3頭目の子グマになり、強くて優しい母に守られながら大雪山を自由に駆け回りたい!!と切望してしまいます。
他にも、大雪山にはたくさんの野生動物が暮らしています。
山の恵みを食べ、子を育て、長い冬を越えて、春の芽吹きと共に目覚める。
寒い冬に耐えることができる毛皮、しなやかな軽い体や器用な指先、美しい鳴き声。全てが魅力的で、彼らと出会うたびに、心がほぐれ、憧憬の念は増し、この自然を守っていきたいと思わずにはいられません。