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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

サケの次はタコ!

2019年12月09日
えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

先日、えりもからは秋サケ定置網漁に合わせたアザラシ被害調査の取り組みをご紹介しました。

ここでいう"被害"とは、定置網(定められた場所に仕掛けられた網)に入った魚のうち、アザラシによるとみられるキズがあったり一部が喰われていたりしたものを指します。



▲アザラシによる食害、「トッカリ食い」(アイヌ語でトッカリ=アザラシ)

定置網漁の場合、漁は毎日実施されるため、毎日記録をとることでその網で獲れたすべての魚のうちどのくらいの割合で被害が出たのか(=その日アザラシが網に近づいてきている)など動向を追うことが出来ます。定置網漁の特徴は、「いつも同じ場所に魚の溜まる箱網がある」ことと、「漁が毎日実施される」ことです。

えりも町は、サケの他にも昆布・ツブ・ウニ・ホッキ・タコ・ボタンエビ・毛ガニ・タラ・ハタハタ・カレイなど...多くの海産物の水揚げがあります。

そういった環境下に棲むゼニガタアザラシは、サケの他にも、海底に生息するタコやアイナメを好んで食しています。

秋サケ定置網漁の調査終了後、今度はタコ船に乗船し被害調査を実施しました!

タコ漁は空釣り縄(からつりなわ)と呼ばれる方法です。

数百メートルの糸の途中に"重しとなる石"と、"タコを引っかけるU字の針"が等間隔に取り付けられています。これを海に沈め、1週間から10日後に引き上げる方法です。ひとつの船でいくつかの場所に仕掛けていて、今日はここ、明日はここといった感じに回収・仕掛けを繰り返します。

▲空釣り縄漁のイメージ 

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▲仕掛けを回収しながら掛かったタコを見つけたら、カギと呼ばれる道具を使い一気に引き上げます。

▲種類はミズダコ。これで15㎏以上ありますが、30㎏程のタコがかかることもあるそうです。

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▲獲れたタコは吸盤があちこち張り付かないよう、すぐに裏返します。漁師さんは裏返しながらタンク目掛けて投げるのですが、丁度タンクの穴へタコの頭部が入る様子はお見事でした!頭部が入ればタコは自分で奥へと入っていきます。

しばらく見ていると、様子の違うタコが上がってきました。

頭部がなく、色は変色し腐敗が進んでいます。これがアザラシ被害です。

▲アザラシによる食害

今回は、これだけ残っていたために被害があったと分かりました。アザラシが大部分を食していたり、腐敗がひどい場合、仕掛針から外れ、被害があったことさえ分からなかった可能性があります。

「いつも同じ場所に魚の溜まる箱網がある」「漁が毎日実施される」が特徴の定置網漁に比べ、被害の把握が難しく、被害対策も工夫が必要になりそうです。

タコ漁に適した対策案を練るためにも、アザラシがどんなふうにタコを捕らえるか知る必要があります。そこで、様子をうかがうための器具を北海道大学の山村准教授に作成していただきました。

▲作成した器具

重しは海底に付くイメージです。その重しから少し上に、板にカメラを下向きに固定し、アザラシの動きを上から撮れるようにしています。また、カメラは海中で常に丁度良い高さに浮かせておく必要があるため、板の上の浮きの数を海水の浮力に合わせ調整してあります。写真で平野保護官が持っている部分は、仕掛けそのものがなくならないよう、ひもを取り付け、海面の目印となるブイにつなげてあります。

▲仕掛け設置の様子

広い海の中、このポイントにタコが来てさらにアザラシが来たところを丁度良く撮影するのは相当難しいことです。今回は少しでもアザラシの様子が映りやすいよう、エサのタコを取り付けました。先にご紹介した通り、空釣り縄漁では仕掛けを回収するのは約10日後です。

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▲帰港後、船からタコを上げる様子

今日分の回収・仕掛けが終われば帰港です。この日は大漁でした!

タコ漁の出港は4時半過ぎ、港に戻るのは14時~15時頃です。丸一日船の上でほとんどの時間風にさらされながら作業しています。これらを見ていると、今後タコをいただくときは、より有難みを噛みしめていただきたいものだと感じました。

同時に、仕掛けに1日、映像が確認できるまでに約10日...これだけ時間がかかるとなると、どうしてもなんらかヒントとなる映像がほしい気持ちも湧いてきます。アザラシの動きは写っているのでしょうか...!まもなく回収の日を迎えます。どうか何かしら写っていますように。。