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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

下サロベツ木道の思い出

2020年04月01日
利尻礼文サロベツ国立公園 青山留美子

この冬、サロベツにある木道は、あちらもこちらも工事をしていました。

寒さの中、例年よりは少ない雪に苦戦しつつも、新しい木道は完成検査も終わり、新たな季節の到来を待つばかりになっています。

それとは逆に、今年度で廃止となり撤去された木道もあります。

それが、下サロベツ木道です。

幌延ビジターセンターからパンケ沼園地へと約3km続いていました。

年々木道の傷みが激しく、維持するのも難しくなり、利用する方の数も限られる場所であることから、撤去されることになりました。

歩くたびに壊れている場所を発見するような木道でした。

なんとか維持するため、補強を繰り返し、つぎはぎだらけになっていました。

見た目は悪いかもしれませんが、私にとってはいくつもの思い出がある木道です。

つぎはぎの木道上から、たくさんの出会いがありました。

一番の思い出は、湿原の植物たちにとても間近に出会えたことです。

様々な鳥たちとの出会いもありました。

木道の幅が狭いので、すれ違う時に譲り合う必要があるため、

山道や雪道のように、ちょっとしたふれあいがおこる所も魅力でした。

トビとオジロワシとチュウヒが三つ巴になっていたのを見た時は、すれ違った方と共に興奮しました。

初めてサロベツでヒグマの痕跡を見たのもこの木道でした。

怖さを含めて、サロベツを体感させてもらいました。

下サロベツ木道を歩くと、

広大な湿原と空に囲まれ、聞こえてくるのは風の音と鳥たちの声だけでした。

たまには、ヒグマがいないかビクビクしたり、ぽつんと一人でいるさみしさを感じたりもしましたが、多くは、この壮大さを味わうことが本当に楽しかったです。

冬の間に木道は撤去され、跡が残っているだけになりました。

寂しさもありますが、また新たな出会いが待っているかもしれません。

新たな木道と湿原が早くなじむ事を願いながら、

次なる出会いが、今から待ち遠しいです。