アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
動き出す生命
2020年04月09日こんにちは。ウトロ事務所の白石です。4月に入り気温が2桁になる日が徐々に出てきたウトロ。それでもまだ寒いからと布団で怠けている人間界をよそ目に、自然界は着実に春を迎えています。
一面を覆いつくしていた流氷はわずかに残るばかり、海明けです。
氷で埋め尽くされていた港が明け、漁船も着水です。上架(船舶を海から引き上げること)している間に漁師さんたちはせっせと漁船のメンテナンスを行います。
いち早く春を報せるのがアキタブキ(フキノトウ)。根雪が無くなった地面からさっそく顔を出していました。
若いフキノトウは天ぷらにすると美味しいです。もう少ししたらギョウジャニンニクが生えてくるので、こちらはしょう油漬けにしてご飯のおともにしましょうね。きざんで餃子もアリです。※
話が逸れましたが、これからエゾノリュウキンカや、フクジュソウといった春の花もほころび始めます。
※ 国立公園の中では、植物の採取が禁止されている場所があります。ご注意ください。
動物たちも繁殖・出産シーズンに突入です。
こちらは北海道のみに生息するエゾモモンガ。冬の間はトドマツやカラマツ、シラカバなどの冬芽を食べて栄養を蓄え、2月下旬~3月下旬に交尾し、4月中旬ごろからベイビーが産まれます。
毛づくろい途中 冬芽を食べるエゾモモンガ
オオワシの大半は北へ帰っていきました。知床に残るのは少数のオジロワシだけ。残ったオジロワシは同じ巣を使い繁殖するため、巣を補強しつつ抱卵期を迎えます。ピリピリしている彼らを刺激しないよう、観察する際は双眼鏡等を使い離れた場所から観ましょう。
沖に消えていく流氷とオジロワシ。北へ帰るのか残るのか。
キタキツネはまだ換毛期を迎えていないようです。
夏になると冬毛が抜けかなりみすぼらしい恰好になりますが、痩せ細っているわけではありません。可哀想だからと誤解し、餌をやることは絶対にしないでください。野生動物において人間の食べ物は栄養過多であり、消化できずにその身を弱らせることもありますし、餌を求めたが故に交通事故で命を落とすこともあります。
ヒグマもどうやら冬眠から覚めた様子。まだ私は見ていませんが、足跡がちらほらと発見されています。こちらもお腹が空いてピリピリしているため、見つけても決して車から降りないでくださいね。
流氷が溶けたことを皮切りに動き出す知床。春はもうすぐそこです。