アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
層雲峡の核心部 Part1
2020年07月28日こんにちは、大雪山国立公園管理事務所の岩城です。
私には、忘れられない風景が層雲峡にあります。そこは、今では立ち入りが禁止されており、
見ることはできません。私の脳裏には今でも子どもの頃に見たそのダイナミックで壮大な情景が、
近くを通るとよみがえります。
思い出の中の層雲峡の絶景について、今回は3部構成でお伝えします。
層雲峡小函地域から銀河流星の滝方面
旧国道沿いの小函地域
層雲峡と言えば、柱状節理が有名です。
節理とは、主に火山性の岩石に見られる現象で、岩石の露出部分に見られる規則性のある割れ目を言い、熱いマグマが冷却固結する過程で形成されます。
節理には主に柱状節理や板状節理、方状節理があり、岩石の種類も玄武岩や安山岩など様々です。
層雲峡地域においては、約3万年前の大雪山の噴火により堆積した熔結凝灰岩が石狩川の浸食により削られ長い歳月をかけ現在の姿となりました。
全国では兵庫県の玄武洞や福井県の東尋坊などが有名ですが、層雲峡の柱状節理は規模が違います。石狩川沿いに約25kmあまりにわたり峡谷が続いているスケールなのです。
その中でも、銀河流星の滝から小函、大函までの間は、層雲峡の核心部と呼ばれ、高さ200m前後の天城岩や天柱岩、岩の形が独特な羽衣岩、切り立った岩壁の神削壁などの絶景が点在しています。
この区間は多くの人がその美しさと迫力を見に来る特別な場所でした。
しかし、1985年には天城岩で小規模な崩落が発生。
その2年後の1987年(昭和62年)6月9日早朝、記憶に残っている方も多いと思いますが、天城岩が大規模な崩落を起こしました。
(この事故は「層雲峡小函天城岩崩落災害」と呼ばれています)
崩落した岩の総量はなんと11,000㎥に及び真横を流れている石狩川を完全に埋め尽くし、対岸の国道上にも岩盤は到達しました。この崩落により岩盤の直撃を受けた3名が亡くなり、6名が重軽傷を負いました。
赤枠は天城岩崩落部分(岩肌の色が赤錆びた部分が崩落箇所)
この崩落災害を受け、小函地域の景観は観光名所から、危険な箇所だと認識されるようになり、銀河トンネルが接続され、1995年(平成7年)には、小函地域は車両では行けない場所へとなりました。ただし、絶景は、しばらくの間、自転車・歩行者専用道路として解放されていましたが、1998年(平成10年)頃から神削壁で落石が頻発したため、その後は、一切の通行が禁止され現在に至っています。
今年に入り、新型コロナウィルスが全国的に猛威をふるい、層雲峡には観光客がいないという状態が続きました。旅館やホテルでは休業が相次いでいました。
そんな折りに、層雲峡再活性化の議論が始まり、層雲峡の歴史を見つめなおす機会がありました。そのような中、注目されたのが、現在では立入りが制限されている層雲峡景観の核心部「小函地域」だったのです。
層雲峡温泉(後方は黒岳)
通行止めとなってから約20年余り。
思い出の中の情景がリアルな景色としてよみがえるお話は次回の日記でお伝えします。。
今回のAR日記はここまで。
また、次回をお楽しみに。。。