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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

旅する蝶

2020年09月10日
上川 忠鉢伸一

97に登山道を巡視中、珍しい蝶を発見しました。

春には南から北へ、秋には北から南へ、海を越えて日本を縦断する、旅をする蝶。

最近、層雲峡黒岳でも撮影されて話題になっていたアサギマダラという蝶です。

アサギマダラの学名は「parantica sita(パランティカ・シータ)」

マダラチョウ亜科に分類される蝶で、「シータ」という名前は蝶が発見されたインド・ヒマラヤ山地

にちなみ、ヒンドゥー教の女神の名前から名付けられたとのことです。

そのうち日本に分布するアサギマダラは「parantica sita niphonica

(パランティカ・シータ・ニッポニカ)」とされています。

202097 高原温泉付近にて撮影

「旅をする蝶」アサギマダラは、日本列島で北上と南下を繰り返していて、その距離は

2000kmにも達します。

この個体にはついていませんでしたが、羽にマーキングをして放蝶するという方法で調査活動がおこなわれており、遠くは台湾までの移動記録があるそうです。

羽化後45ヶ月位が寿命とされていて、その与えられた時間の中で2000kmを移動し産卵するのです。

202097 高原温泉付近にて撮影

この1gに満たない身体でなぜ2000kmもの距離を移動できるのか?

鳥のように繁殖地という目的地を目指しての旅という訳でもなさそうですし、海を渡るというリスクを冒してまで移動するのはいったいなぜなんでしょうか?

今のところは謎のままです。

謎を秘めた蝶故に、愛好者を魅了し続けるのでしょう。

偶然出会えたこのアサギマダラが、冬が来る前に無事に南へ旅立てる事を祈るばかりです。