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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

サロベツのアイドル争い

2020年12月17日
利尻礼文サロベツ国立公園 青山留美子

秋には数え切れないほどのオオヒシクイやマガンがいた場所に、今はぽつんとオオワシがいるのを見て、

季節の移ろいをしみじみ感じた、サロベツ担当の青山です。

サロベツでは、夏鳥が姿を消した10月以降、夏鳥について知る機会が増えます。

それは、10月にチュウヒの、11月にシマアオジの報告会がそれぞれ行われたからです。

チュウヒとシマアオジは、夏鳥として飛来し、サロベツで繁殖している鳥です。

どちらも、日本では数が減ってきていると言われており、共に、2017年に「国内希少野生動植物種」に指定されました。

指定後に調査が始まり、二種とも国内で一番の繁殖地がサロベツだという事がわかってきたところです。

希少な鳥がいることやサロベツが繁殖地として大切な場所だという事などを多くの方に知ってもらいたいとの思いから、その年に行った調査の報告会が行われるようになりました。

今年は、三密にならないよう会場を広くし、間隔を空け、マスク着用や検温など、できうる限りの対策を行った上で開催しました。

「チュウヒ報告会」は1031日(土)に行われました。

チュウヒは、日本では唯一湿地で繁殖する猛禽類で、サロベツでは春から秋にかけて、海岸線や牧草地などでよく見ることができます。

報告会では、サロベツでの繁殖状況と地域との関係についてだけでなく、サロベツ以外で調査されている方の報告もあり、他地域の様子や繁殖へ影響している問題などについても知ることができました。

ヨシ原やササ原で営巣しているチュウヒと、そこで行っている人間の活動とがぶつかることがしばしばあるようです。

営巣地が国立公園外に多いことが、頭を悩ます原因の一つともなっています。

私たちには、ただただ草原が広がっているようにしか見えない場所でも、違う生き物にとっては最高の生息環境になる事を教わりました。

続いて、「シマアオジ報告会」は1128日(土)に行われました。

シマアオジは、現在、サロベツでも限られた場所でしか確認されていません。

湿原のお花が最高潮の頃、大きなカメラを携えシマアオジを探している方々の様子を多く見かけます。

大きなカメラでも出会う事は容易ではないため、小さなカメラや双眼鏡しかない私は、さえずりが聞こえただけでも、宝くじに当たった級の幸運だと思っています。

報告会では、サロベツでの繁殖状況と普及啓発の取り組みについてのお話や座談会が行われました。

シマアオジは、ユーラシア大陸で繁殖し、大陸を通って東南アジアなどで越冬しているため、国際的な保全活動についての報告もありました。

1980年代までは、北海道全体でシマアオジはよく見られる鳥の一種だったそうです。

その後、90年代から急激に減ってしまい、今ではサロベツが国内では唯一の繁殖地との事です。

今見られているものが今後も変わらず見られるかはわからない、普通に見られるという事がどれだけ貴重かを、教えられました。

チュウヒやシマアオジについて知り、サロベツの貴重さを感じ、そこからどうしていけばいいのか?

いつも考えさせられる報告会です。

どちらも、サロベツを代表する種ですが、

ここ数年、毎年チュウヒとシマアオジの報告会が立て続けに行われているので、サロベツのアイドルの頂点を争っているかのように感じています。

見つけやすいチュウヒか、見るのは難しいけれど日本ではここだけのシマアオジか。

V字飛行でわかりやすいチュウヒか、鮮やかな黄色と心地よいさえずりのシマアオジか。

報告会の参加者数から見るとチュウヒの方が人気ですが、

サロベツのアイドルをどちらかに決めるのは、とても難しいです。

更にここ数年、繁殖が確認され、サロベツでも少しずつ増えてきているタンチョウが頭角を表してきており、三つ巴の戦いになりつつあるように感じます。(タンチョウの報告会が12月に予定されています)

サロベツの鳥界のアイドル争いは、なかなか熱い戦いになってきています♪