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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

準備着々...

2021年04月28日
えりも自然保護官事務所 熊谷 文絵

みなさんこんにちは、えりも自然保護官事務所の熊谷です。

▼えりも事務所からの景色

 

山道にはまだ雪が残っているものの気温の高い日が続き、えりもではおなじみの強風も柔らかな春の風へと変わってきました。この時期、個人的には冬が終わってしまった寂しさと花粉が飛ぶなぁ...苦手。そんな気持ちが入り混じります。それでも、"春"に気分が高揚することもあるんです。

それはっ!

野生のゼニガタアザラシの赤ちゃんが見られること。

えりも町周辺はゼニガタアザラシの国内最大の繁殖地・生息地となっていますが、そのゼニガタアザラシは4月後半ごろから出産が始まり子育てのシーズンを迎えます。母アザラシから産まれたばかりの赤ちゃんアザラシは毛が新しいのでツヤッツヤ。成獣(おとな)に比べ、黒っぽく見えます。産まれたその時から泳ぐこともできますが、その動きはまだまだ拙く、こどもらしい可愛らしい姿です。

▼アザラシ親子(4月26日撮影)

 

今年初めてこどもの姿を確認しました!

2頭の間に小さな赤ちゃんアザラシがいます。波が打ち寄せる度、おとなのアザラシはシャチホコのように頭部と尾っぽを反るようにして避けますが、赤ちゃんは波を避けきれずにさらわれそう。見ていてハラハラしてしまいます。本日確認できた赤ちゃんは3頭でした。

近くにはお腹の大きな妊娠個体が沢山いたので、これから小さな赤ちゃんアザラシが増えそうです!

これらの様子を見られる目安は6月いっぱい。その後、栄養、特に脂肪分の多い母乳をもらっていた赤ちゃんアザラシは独り立ちの時を迎えます。少しだけ沖に出てこども同士で遊んだり魚を捕ったりと泳ぎ回ります。

襟裳岬の突端から双眼鏡で覗けばアザラシの子育ての様子が見られます。町施設の「風の館」には望遠鏡が置かれていますので、皆さんもぜひ!

アザラシの子育て。他では見られないこの光景はえりもの春らしさとも言えますが、アザラシとは別のこの光景も、とてもえりもらしいものです。何をしているところでしょう?

▲これは漁師のみなさんが、定置網を設置する準備をしているところです。

えりも町の襟裳岬以西では春(5月上旬~7月に上旬)に定置網漁が行われていますが、その網は周年海に入っている訳ではありません。シーズンが終われば陸に上げ、清掃や修繕をします。またシーズン開始前には網の状況を確かめたり準備をして、初日に間に合うよう決められた場所に設置します。

えりも自然保護官事務所では、今年度も"春さけ定置網漁"に同行し、アザラシによる被害調査を実施します。船に乗り始めるのはGW後からですが、約2カ月続く調査期間を前に準備の進む現場の様子を見て「この時期が来たんだな、始まる」と、ちょっとした緊張感にも包まれます。

漁師さんがよく言います。「準備は前もって、もうこれで大丈夫と何度も確認するくらいでなければダメだ」。定置網漁の準備をする漁師のみなさんの丁寧かつ確実な仕事ぶりを見ていると「えりもの海を熟知していて、だから突風に吹かれても高波がたっても予想外のことが起きてもケガなく対応できるんだ」と思います。

私も、スムーズに調査に入れるよう、調査用紙・水中カメラ・水産合羽等の準備はぬかりなく!始めることとします。

▼調査用紙と記入ボードの準備

▼水中カメラの準備

▼今年から乗船デビューの黒田保護官

船上では合羽を脱ぎ着している暇はありません。また、大きすぎても小さすぎても動きづらいので、自分に合ったサイズを身につけることも大事な準備のひとつです。

準備着々◎