アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]
今年の春は...
2021年07月06日えりも自然保護官事務所の熊谷です。
今回のタイトルは、「今年の春は...」です。
気温も高くなってきたこの7月に春の話とは少々違和感を感じる方もいるでしょう。
ですが、私にとってはつい数日前まで「春」でした。
えりも自然保護官事務所の業務のほとんどは、えりも町周辺海域に生息しているゼニガタアザラシに関するものです。
このゼニガタアザラシは日本に唯一定住するアザラシで、こんなにも近くで野生のアザラシが見られることは珍しく喜ばしい反面、町内で盛んに行われている定置網漁に漁業被害をもたらす一面も持ち合わせています。えりも町民の多くは漁業関係者であり、漁業被害は死活問題と言えます。
▲トッカリ食い
アイヌの言葉でアザラシをトッカリと呼びます。トッカリに食われてしまったサケ・マスです。
ゼニガタアザラシがえりもに生息し続けるということは、何らかえりもを選ぶ理由があるはずです。恐らくは岩礁に上陸し休息をとる習性のあるこのアザラシに適した上陸場となる岩礁が多数あること、そして餌となる魚が豊富なこと、外敵となるシャチなどが滅多に来ないことなどが挙げられると思います。
今後もこの場所でゼニガタアザラシに快適に過ごしてもらいながら、漁業被害を減らすにはどうしたらよいか...これこそ、えりも自然保護官事務所が取り組む業務です。
その業務の中のひとつ、年に2シーズンの長期に渡る乗船調査。
5月からつい先日まで実施されていた「春さけ定置網漁」に同行し、ゼニガタアザラシの漁業被害を把握したり、定置網の入口に魚は通れるがアザラシは通れない格子状の網の設置することで獲れた魚は被害を被らないようにすること、またその網の改良などを行いました。
▼今年、定置網で多く獲れた「ニシン」や「サバ」
こうして約2カ月の乗船調査を終えたばかり。つい最近、「春さけ定置網漁に同行しての調査」を終え、やっと春が過ぎた気持ち、という訳です。
とはいえ録り溜めた記録のまとめが残っています。これからしばらくは外に出るよりも机に向かう時間が増えます。調査用紙には漁期を思わすウロコが付いていたり海水が乾いて潮が浮いていたり。長いようで短かった調査の日々が思い出されます。
まとめの結果、どんな傾向が見えてくるでしょうか。
今回は、2カ月の漁期を終えたご報告まで。次回は漁期中の工夫をご紹介します〇 お楽しみに!