2021年8月13日
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2021年08月13日雄阿寒岳に登ろう!
阿寒摩周国立公園 阿寒湖 鈴木達郎
こんにちは、阿寒湖管理官事務所の鈴木です。
月日を少し遡って6月下旬頃、雄阿寒岳の登山巡視をしてきました。
突然ですが、登山口で下の写真のような機械をご覧になったことはありませんか?
こちらの機械は登山者カウンターといい、各登山道の利用者数を把握するために環境省が設置しているものです。阿寒湖の周辺では、雌阿寒岳の3つの登山道と今回ご紹介する雄阿寒岳登山道のあわせて4箇所に登山者カウンターを設置しています。
下の表は、設置した登山者カウンターで計数した昨年(令和2年)度の月ごとの登山者数をまとめたものです。黄色のグラフが雌阿寒岳、青色のグラフが雄阿寒岳の登山者数を表しています。
年間利用者数は雌阿寒岳登山者数10,501人に対し、雄阿寒岳は1,738人。
雄阿寒岳は雌阿寒岳に比べるとやや急峻であり、登山の難易度は高いため、年間利用者数は少なくなっています。しかし、頂上からの眺めは格別ですので、登山経験がある方や体力に自信がある方には是非おすすめしたい山の一つです。
雄阿寒岳の登山口を入って10分ほど歩くと、右手に太郎湖が見えてきます。太郎湖には阿寒湖の湖水が流れ込んでいるため、注意深く観察すればコイやアメマスなど淡水魚の魚影が見られます。
澄んだ湖底に静かに横たわる古倒木がなんとも趣深い美しい湖です。
(※右側の写真は湖底の緑が映える冬期に撮影したものです)
太郎湖を過ぎ、さらに10分ほど歩くと登山道左下に次郎湖が見えてきます。次郎湖は流出河川などがなく、地下水で太郎湖や阿寒湖と繋がっていると考えられており、流れがほとんど見られないとても静かな湖です。
天気の良い日には水面が鏡面のように反射し、神秘的なひとときを味わうことが出来ます。
さて、太郎湖、次郎湖を過ぎると5合目辺りまで鬱蒼とした針広混交林が続きます。
こまめに休憩を取り、阿寒の森の豊かな自然を存分に味わいながら登山を楽しみましょう。
登山道脇で見かけたエゾアカガエル。水場から結構距離があるはずなのに森の中を元気に飛び跳ねていました。
こちらは2~3合目辺りにある風穴。永久凍土が奥にあるらしく、年中冷たい風が吹き出してきます。
3合目付近の岩の隙間にはヒカリゴケが自生しているポイントがあります。よかったら探しながら登ってみてください。
5合目から先は植生も針広混交林からハイマツを中心とした高山帯へと移り変わります。この辺りからパッと展望が開け、風も吹き込んで爽やかな気持ちで歩くことができます。
イソツツジ | ウコンウツギ |
エゾノクサイチゴ | ハクサンチドリ |
ミネザクラ | イワウメ |
高山帯では5合目までと植生ががらりと変わり、色とりどりの高山植物を見ることができます。足下には見頃を迎えたイソツツジやウコンウツギ、エゾノクサイチゴ、ハクサンチドリ、頭上にも可愛らしいミネザクラが咲いていました。
さらに山頂付近の岩場では大量に咲き誇ったイワウメが私たちを出迎えてくれました。
今回紹介したのは主に6月中旬から7月下旬の初夏に見頃を迎える高山植物ですが、春~夏の雄阿寒岳はこのように様々な高山植物が楽しめ、秋口に差し掛かってくると、今度は息を呑むような美しい紅葉を楽しむことができます。
雄阿寒岳の山頂から見える風景です。山頂からは阿寒湖の湖沼群はもちろん、遠くの屈斜路湖まで見渡せる大パノラマが堪能できます。
雄阿寒岳は登山難易度が高く、5合目を過ぎるまでは樹林の中をひたすら登る険しい道のりとなりますが、その分、山頂に辿り着いた時の達成感は格別です。
雌阿寒岳とはまた違った良さのある山ですので、是非登山の候補として検討してみてください。
入山される際は十分に注意して、天候・服装・装備等を確認の上、登山をお楽しみください。
今回ご紹介した雄阿寒岳登山道は、環境省Webサイトでも見どころや登山ルートを解説しています。ぜひこちらも合わせてご覧になって下さい。
2021年08月13日「アトサヌプリ(硫黄山)」という山
阿寒摩周国立公園 川湯 武山栞
阿寒摩周国立公園管理事務所の武山です。
記録的な暑さの日が続きましたが、今回の記事もあつい話題となっています。川湯温泉の源泉である「アトサヌプリ」(=硫黄山)の調査登山に行ってきましたので、紹介させていただきます。
「アトサヌプリ」はアイヌ語で「裸の山」という意味。山から噴出される火山ガスの影響で、噴気孔の周りでは植物がほとんど生育できません。過去には硫黄採掘も行われていたことがあり、その形跡が今でも確認できます。
↑アトサヌプリの麓の森林内にこんなものが。当時の硫黄採掘時に利用していた鉄道の線路を木が取り込み、そのまま成長しここまで持ち上がったようです。年月の経過が感じられます。
ほぼ平地の森林を抜けると、一気に雰囲気が変わり、登りになります。なんだかとても高い山に来た気分...!でも実際は、写真の場所で標高200mくらいなので驚きです。↓
場所によっては、火山ガスの影響により低標高にも関わらずハイマツが生育していますが、後は岩ばかりです。でも不思議なことに、登山中、新鮮なキツネのフンやシカのフンをいくつも見かけました。彼らは一体ここへ何をしに来るのでしょうね。
↑三角点337mが今回の調査コースの頂上です。(本当の山頂には現在は登ることはできません。)
遠くに川湯温泉街と、それに続く道路が見えます。左奥にちらっと写っているのは屈斜路湖です。低い山なので、広い土地や湖を一望!...とはいきませんが、駅前や温泉街の建物、畑や牧草地が広がっているのを見下ろせます。川湯に住む人々の営みを感じられるスポットです。タイミングが合えば、釧路と網走をつなぐJR釧網本線の気動車が走るのを見られるのだとか。
この調査登山は7月初めでしたので比較的涼しかったですが、日差しを遮るものがない上、アトサヌプリ特有の白い砂からの照り返しもあり、想像以上に暑かったです。すぐにでも温泉に入りたくなりました。
ここまでアトサヌプリ登山の魅力について書かせていただきましたが、危険性についても知っておくことが大切です。アトサヌプリは活火山で、熱い火山ガスが常に噴気孔から吹き出しています。また、過去には落石事故、滑落事故など痛ましい事故も起こりました。そのため、一度は立入り禁止となりました。
ですが、現在では認定ガイド付き限定でトレッキングができるツアーが企画されており、今年度も開始に向けて調整中です。ツアーが開始されたらぜひ挑戦してみてください。ガイドさんの興味深いお話を聞きながら歩くことで、下から眺めるだけでは分からない、硫黄山の魅力をより感じることができると思います。
2021年08月13日ヒグマ情報センター巡視員体験
大雪山国立公園 入江瑞生
大雪山国立公園には高原温泉ヒグマ情報センターがあり、そこから沼巡りができます。紅葉の時期は人が多く人気な場所なのですが、この時期の見どころは、雪渓の上でごろごろと涼んでいるヒグマの姿が見られることです!
登山者とヒグマの接触が起こらないように巡視員がおり、今回は巡視員の体験をしてきました。
朝センターの専門の巡視員と一緒に、痕跡を探しながら高原沼まで行きました。この時期の沼巡りコースにいるヒグマはミズバショウやフキを食べ、雪渓の近くではハクサンボウフウを食べているのではないかとセンターの方は話していました。
上の写真にヒグマがいるのですが、皆さんは見つけられますか??
雪渓の上の方にある黒い点がクマです!!今回は高原沼まで行くと、運よく雪渓の上でゴロゴロしているクマがいました。雪渓を出、食事を再開したと思うと雪渓に戻ってきて涼む姿は、とても愛らしかったです。高原沼でクマを観察している最中はとても暑く、雪渓で涼むことができるヒグマがうらやましかったです。現在残雪状況は下の写真の通りで、8月中旬までは雪渓が残るだろうといわれています。
沼巡りコースは名前の通り沼が多く、それぞれの沼で雰囲気が違うので、とてもワクワクしながら沼が見られるのではないかと思います。
紅葉時期もきれいですが、雪渓が残るこの時期の沼巡りコースもおすすめです!
コース内を歩いているとエゾシカもいました。こちらを確認してまた食事を再開。とてものんびりとしているシカでした。
清流やきれいな湖池にしか生息しないバイカモが見ごろでとてもきれいでした。
巡視員として周りを見ながら気を付けてゆっくり歩いてみると、今まで通り過ぎていた植物、昆虫たち、痕跡に出会えました。山頂目指して歩くのも良いですが、皆さんもぜひ周りをゆっくり見ながら歩いてみてはいかがでしょうか?
こんにちは、阿寒湖管理官事務所の鈴木です。
5月26日(水)に足寄町役場・足寄観光協会・足寄山友会・林野庁と合同で雌阿寒岳登山道の安全点検を実施してきました。
今回の点検では利用者が安全に登山出来るように、道迷いや危険防止のための規制テープの張り替えや、火山活動に関する注意看板の立て替えを行いました。
雌阿寒岳には、雌阿寒温泉のそばに登山口がある雌阿寒温泉コース、オンネトー野営場のそばに登山口があるオンネトーコース、阿寒湖温泉街からフレベツ林道を少し上ったところに登山口がある阿寒湖畔コースのあわせて3つの登山道があります。
今回点検したのは、足寄側にある雌阿寒温泉コースとオンネトーコースの2つです。
参加者は2班に分かれそれぞれの登山道を点検していきました。私はオンネトーコースを担当することになりました。
オンネトーコースは、利用者が多い雌阿寒温泉コースに比べるとやや距離が長いものの、比較的勾配が緩やかで、低地では針広混交林の豊かな森を堪能することが出来ます。
登山口に入ってすぐ、エゾオオサクラソウやヒメイチゲなど春先~初夏に見頃を迎える可愛らしい草花が私たちを出迎えてくれました。
▲エゾオオサクラソウ(左)、ヒメイチゲ(右)
まだ本格的な高山植物の季節には少し早かったですが、この時期しか見られない花を存分に愛でながら歩みを進めていきました。
三合目付近には、岩穴の奥で薄緑の神秘的な光を纏うヒカリゴケが自生しているポイントがあります。ヒカリゴケは厳密には発光しているわけではなく、光を反射する特殊な構造の細胞を持つコケ植物です。
岩に差し込む日光を遮るようにすると光がよく見えるので、是非ご観察下さい。
オンネトーコースは、5合目を過ぎてハイマツ帯に入るまで阿寒の深い森の中を歩きます。
今回の点検で、つまずきそうな樹の根や道沿いの枯損木にはテープを巻いています。登山をされる際は景色だけに目を奪われず、周囲をよく注意して歩きましょう。
▲ヒカリゴケ(左)、テープを巻いた枯損木(右)
オンネトーコースの7合目あたりでは、両脇から茂ったハイマツで登山道はトンネルのように様変わりします。このハイマツ帯を抜けると一気に展望が開けます。
前方には雄大な雌阿寒岳がそびえ、右手に美しい円錐状の阿寒富士、振り返ると麓に深い群青色のオンネトーが見えてきます。
風は強かったものの、雲間に青空の映える作業日和の良い天気でした。
▲ハイマツのトンネル (左)、7合目から望むオンネトー(右)
▲阿寒富士(左)、雌阿寒岳山頂(右)。
▲火山防災看板立て替え作業
現在の雌阿寒岳は残雪もすっかりなくなり、非常に歩きやすくなっています。山頂付近では、メアカンキンバイやメアカンフスマ、コケモモにガンコウランといった多様な高山植物が開花結実する登山のハイシーズンを迎えています。
入山される際は十分に注意して、天候・服装・装備等を確認の上、マナーを守って登山を楽しんで頂ければと思います。
今回ご紹介した雌阿寒岳登山道は、環境省Webサイトでも見どころや登山ルートを解説しています。ぜひこちらも合わせてご覧になって下さい。
(https://www.env.go.jp/park/guide/akan/recommend/01.html)