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北海道地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [北海道地区]

してはならない

2021年08月04日
大雪山国立公園 上村 哲也

 平成28年8月、短い期間に3個の台風が北海道に上陸し、1個が接近して断続的に大雨となり、ニペソツ山の十六ノ沢(杉沢)コース登山口に通じる林道が壊滅的な被害を受けました。関係者の努力により廃道同然であった幌加温泉コースが整備され、平成30年夏、こちらから登山ができるようになりました。

 幌加温泉コースは往復10時間から13時間と紹介されるロングコースです。関係者が協議し、前天狗を暫定の野営指定地として扱うこととしています。

 自然公園法の特別保護地区にあたる前天狗では、許可を受けなければしてはならない行為がいくつもあります。土地の形状を変更することもそのひとつです。テント場にと裸地を広げること、風よけにと石を積むこともこれに含まれます。

 岩場や風衝地、ハイマツなどが広がる前天狗ですが、岩と岩の隙間、風衝地の礫の中にも一生懸命に植物が根を下ろし枝葉を広げようとしています。岩の表面に張り付いて広がる地衣類もいます。これらの岩を動かしたり裏返したりしてしまうと、風当たりや日当たり、そのほかの環境が大きく変化してしまい、生育・生息していた植生や昆虫などが影響を受けます。

 高山の植物としてコマクサがよく知られ愛されていますが、これらは、礫地の中の比較的大きな石粒や岩に寄り添って守られるように根を張っています。イワウメやイワベンケイなども岩の隙間に、あるいは岩に張り付くように生育します。花が咲いていると誰でもすぐに分かり踏みつけないように心がけますが、葉を広げただけでも気付きたいし、芽も葉も出ていなくとも高山植物が生育しそうな地質や土壌があれば踏み荒らさないよう心がけたいものです。

手厚く守られるコマクサ石のサークル(写真左)で手厚く守られるコマクサ

テント(?)につぶされたイワブクロテント(?)につぶされたイワブクロ